開催趣旨
かわりゆくもの、
かわらないもの。
令和4年(2022)、沖縄県は復帰50年を迎えます。かつて琉球王国として独自の歴史と文化を有した沖縄は、明治以降の近代化や先の戦争という困難を乗り越え、現在もその歴史、文化を未来につなぐ努力を続けています。本展は、王国時代の歴史資料・工芸作品、国王尚家に伝わる宝物に加え、考古遺物や民族作品などのさまざまな文化財が一堂に会します。
また、沖縄県では、平成27年度より琉球王国文化遺産集積・再興事業として、失われた文化遺産の復元に取り組んできました。この事業によって制作された復元作品も多数展示します。琉球・沖縄の歴史や文化を総合的にご覧いただけるまたとない機会です。
東京国立博物館は、明治期の沖縄県からの購入品に、その後の寄贈品を加えた日本有数のコレクションを収蔵しています。平成4年(1992)、復帰20年の折には、特別展「海上の道」を開催するなど、これまで琉球の歴史と文化に関する研究や展示普及活動に努めてまいりました。こうした礎のもと、力強く輝き続ける琉球の歴史と文化を過去最大規模で展観します。
九州国立博物館は開館以来、「日本文化の成り立ちをアジアとの関わりのなかでとらえる」というコンセプトをかかげてまいりました。平成18年(2006)には、特別展「うるま ちゅら島 琉球」を開催するなど、琉球の文化交流史は博物館活動の重要な位置を占めるものです。この原点に立ち返り、アジア諸国の交流という視点で琉球・沖縄の姿を見つめ直し、その歩みをたどります。
みどころ
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琉球国王、尚家400年の
貴重な宝物が一堂に金銀、水晶など色とりどりの玉で飾られた「玉冠」をはじめ、王族が身につけた格調高い衣裳や刀剣、王国の中枢である首里城を華やかに彩った漆器や陶磁器など、国宝の「尚家宝物」が一堂に会します。
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100件を超える
国・県・市指定文化財が集結およそ11世紀末頃にはじまる、いわゆる古琉球時代の交易の様子を伝える出土品や歴史資料から、琉球王国の伝統的な技を今日に復活させた模造復元作品に至るまで、琉球・沖縄の文化財を過去最大規模で紹介します。
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琉球の美と技を今に伝える、
圧巻の模造復元作品沖縄県では、平成27年度より最新の科学分析や研究情報に基づき、失われた文化遺産の模造復元に取り組んできました。展覧会の締めくくりに、その成果と事業に関わったたくさんの人びとの想いをご覧ください。
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首里城公園 首里城正殿(平成26年(2014)撮影)
画像提供:一般財団法人 沖縄美ら島財団 -
沖縄のシンボル
首里城首里城は14世紀後半頃に創建され、15世紀初頭には王国支配のための拠点となり、約500年にわたって政治・外交の中心として、さまざまな文物が集積され、独特の文化が花開きました。政治行政の中心であるだけでなく、王国の祭祀儀礼や祈りの場としての聖地でもありました。しかし、長い歴史の中で何度かの焼失と再建を繰りかえしています。いつの時代も再建の道のりは決して平坦ではありませんでしたが、多くの人たちの努力によって甦ってきました。首里城は、現在も人びとの想いとともに復活への歩みをはじめています。

黄色地鳳凰蝙蝠宝尽
青海波立波文様
紅型綾袷衣裳
(琉球国王尚家関係資料)
黄色地鳳凰蝙蝠宝尽青海波立波文様紅型綾袷衣裳
(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 第二尚氏時代・18~19世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年8月23日(火)~9月4日(日)
鮮やかな黄色に胸や肩には鳳凰を、腰から裾にかけては中国の官服に表現される文様を紅型で染めています。鮮やかな赤い襟の振袖仕立ては、若い王族のために儀式などの正装用に仕立てられたのでしょう。

玉冠(付簪)
(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 第二尚氏時代・18~19世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~7月31日(日)
色とりどりの玉を多数取りつけ、金の簪をつけた琉球国王の冠。合計288個もの金・銀・水晶・珊瑚・琥珀・瑪瑙・軟玉の7種の飾玉が金鋲で留められており、王権の象徴であると同時に、琉球独自の美意識がうかがえます。

銅鐘
旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)
- 九州
- 藤原国善作 第一尚氏時代・天順2年(1458)
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
海洋王国・琉球の繫栄を象徴する梵鐘。琉球王国は、船の交易によってアジア各地を結ぶ「万国津梁」(万国の架け橋)であると自らうたった銘文を刻みます。かつて首里城の正殿に懸けられていたと伝わる鐘です。

おもろさうし
- 九州
- 第二尚氏時代・18世紀
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
- ※会期中、展示替えがあります。
琉球の島々に伝承された古歌謡「おもろ」の歌謡集。おもろの題材は信仰、祭祀、築城、造船、貿易、航海、租税、島々の支配など多岐にわたります。琉球語の歌謡を日本から伝わった平仮名で表記する点も注目です。

聞得大君御殿雲龍黄金簪
- 九州
- 第二尚氏時代・15~16世紀
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
五穀豊穣や王府の安寧を祈願する祭祀を司った神女組織のなかで、最高位にあった聞得大君が所持したと伝わる金銅製の簪。カブと呼ばれる半球状の頭部には、太陽とみられる大きな渦や龍を精緻に表しています。

朱漆山水人物沈金足付盆
- 九州
- 第二尚氏時代・16~17世紀
- 沖縄・浦添市美術館蔵
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~9月4日(日)
琉球独特な形状の足付盆。器体の表面に朱漆を塗り、彫刻刀で文様を彫ったところに金箔を摺り込む沈金という技法で装飾が施されています。盆の見込から足の側面にかけて、山間に幽居する人物の姿が繊細に表された名品です。

紅色地龍宝珠瑞雲文様紅型綾袷衣裳
(琉球国王尚家関係資料)
紅色地龍宝珠瑞雲文様
紅型綾袷衣裳(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 第二尚氏時代・18~19世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~8月21日(日)
振袖に仕立てられた王族の少年の衣裳です。宝珠を携えた双龍文様は、王家を象徴する文様でした。型紙を用いて絵文様を色鮮やかに染める琉球独特の紅型は、まぶしい南国の陽ざしに映えたことでしょう。

赤地龍瑞雲嶮山文様繻珍唐衣裳
(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 第二尚氏時代・18~19世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~7月31日(日)
玉冠とともに、国の重要な儀式でのみ用いられる冬季の礼装用の表着(うわぎ)です。中国・清朝の皇帝から下賜された官服用の錦を用いていますが、広い袖は明時代の礼装の伝統を守り、垂領(たりくび)の襟は琉球衣裳の仕立てとなっています。

金装宝剣拵(号 千代金丸)
(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 刀身:室町時代・16世紀
- 拵:第二尚氏時代・16~17世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~9月4日(日)
鞘(さや)の全面に薄い金板を巻き、柄頭には竹節状の鐶(かん)を取りつけるなど、一般的な日本刀の拵とは大きく異なる琉球独自の点が目をひく宝剣です。もとは今帰仁城(なきじんじょう)を本拠とした山北(北山)王歴代の一振で、のちに尚家に献上されたと伝わります。

貝匙
- 九州
- 貝塚時代後期・6~7世紀
- 鹿児島県奄美市
- 小湊フワガネク遺跡出土
- 鹿児島・奄美市立奄美博物館蔵
貝をはじめとする海由来の素材を用いた道具や装身具は、当地における文化の特色です。本作品はヤコウガイの最も湾曲の大きな部分を打ち割ってつくられたもので、研磨によって変化する真珠層の色彩が美しいです。

蝶形骨製品
- 九州
- 縄文時代晩期・前1000~前400年 沖縄県読谷村吹出原遺跡出土
- 沖縄・読谷村教育委員会蔵
- 画像提供:世界遺産座喜味城跡ユンタンザミュージアム
沖縄の先史文化を代表する装身具がジュゴンの骨でつくられた蝶形骨製品です。ジュゴンが生息するサンゴ礁の海は豊かな海の象徴でもあり、本作品は当時の人びとが海の恵みを活かして暮らしていたことも示しています。

厨子甕
- 九州
- 第二尚氏時代・雍正5年(1727)
- 沖縄・那覇市立壺屋焼物博物館蔵
厨子甕とは、洗骨を入れて墓室に納めるという琉球特有の墓葬を象徴する蔵骨器。胴に刻まれた銘文から被葬者と納骨の年がわかる貴重な作品です。

紺地花織木綿
衣 白地木綿裙
- 九州
- 第二尚氏~明治時代・19世紀
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
衣は丈が短い上衣で、巻きスカートの裙とともに着用しました。花織とは琉球における浮織物の総称です。祭りの衣裳や晴れ着として庶民に愛用されました。

琉球国奇観
- 九州
- 江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~9月4日(日)
奄美大島の自然や習俗などが詳細に描かれています。九州と沖縄の間に位置する奄美群島は古くから人びとの往来があり、かつては琉球王国の統治下にありました。本作品からは沖縄と共通する風俗や習慣が見て取れます。

色とりどりの不揃いな飾玉まで再現
模造復元 美御前御揃(御玉貫)
- 九州
- 上原俊展〔金細工まつ〕
- 高田明〔公益財団法人 美術院〕
- 平成30年度 沖縄県立博物館・美術館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
錫製の瓶の上から、色とりどりの飾玉をあしらった酒器です。編み込まれたガラス玉は、隙間がより小さくなるように、あえて不揃いのものを組み合わせていたことがわかりました。

首里城図
- 九州
- 第二尚氏時代・19世紀
- 東京・公益財団法人
- 美術工芸振興佐藤基金蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
19世紀前半の首里城を描いた図。正殿と御庭(うなー)を囲む中心部を象徴的に描いています。王国時代の首里城の姿を伝える貴重な絵図です。

琉球芸術調査記録
- 九州
- 鎌倉芳太郎筆
- 大正~昭和時代・20世紀
- 沖縄県立芸術大学附属図書・芸術資料館蔵
- ※会期中、ページ替えがあります。

模写復元 尚灝王御後絵
- 九州
- 東京藝術大学保存修復日本画研究室(制作) 平成29年度
- 一般財団法人 沖縄美ら島財団蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)

左:三彩鴨形水注
- 九州
- 中国 明時代・16世紀
愛らしい鴨のかたちをした水注です。型を使って羽の細部まで丁寧に表し、からだを黄と緑の釉薬で彩っています。ノロ(神女)をつとめた旧家に花入として伝わったものです。
右:三彩鶴形水注
- 九州
- 中国 明時代・16世紀
中国明時代の末頃に福建で焼かれた鮮やかな三彩のやきものは、首里城からまとまって発見されています。祭祀などで珍重されたのでしょう。こちらもノロの家に伝わった貴重な作品です。

花卉図
- 九州
- 山口宗季(呉師虔)筆
- 第二尚氏時代・18世紀
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~9月4日(日)
山口宗季(やまぐちそうき)(呉師虔(ごしけん)、1672~1743)は王府の絵師で、中国の福建(ふっけん)地方に留学して、精緻な花鳥画表現を学びました。その作品は、琉球と交流のあった薩摩(さつま)を通じて京都でも評判となったといいます。

行書福字賛軸
- 九州
- 清時代・乾隆22年(1757)
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
清の皇帝が琉球国王を任命する冊封使(さっぽうし)の副使を務めた周煌(しゅうこう)が、琉球で迎えた新年を祝い、「福」字を大書したものです。琉球や日本では、中国の文人の書が珍重されました。

黒漆雲龍螺鈿東道盆
(琉球国王尚家関係資料)
- 九州
- 第二尚氏時代・19世紀
- 沖縄・那覇市歴史博物館蔵
- 展示期間
- 2022年8月9日(火)~9月4日(日)
「東道」とは客をもてなす主(あるじ)という意味。黒漆にヤコウガイの螺鈿で、五爪の雲龍文様を表すタイプは、王府の貝摺(かいずり)奉行所で製作され、中国皇帝などに献上されました。

玉ハベル
- 九州
- 江戸時代または第二尚氏時代・17~18世紀
- 個人蔵
琉球の村落で祭祀を司った神女がノロです。玉ハベルはノロの装身具で、ガラス玉を編みつないだ本体に、ハベルという三角形の布が付きます。ハベルは蝶や蛾を意味し、神女や霊力を象徴しています。

黒漆菊花鳥虫沈金丸外櫃 ・ 緑漆鳳凰雲沈金丸内櫃
- 九州
- 第二尚氏時代・15~16世紀
- 個人蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
久米島のノロが、尚真(しょうしん)王より下賜された勾玉を収めたとされる櫃です。
沈金の線がとても緻密で、15~16世紀にさかのぼる現存最古級の貴重な作例です。

緑釉嘉瓶
- 九州
- 壺屋 第二尚氏時代・19世紀
- 沖縄・那覇市立壺屋焼物博物館蔵
17世紀後半に窯場が壺屋に統合され、琉球の製陶が開花します。深い緑色の釉が印象的なこの瓢形の瓶は婚礼や祭祀の際に酒を入れたもので、琉球独特のうつわです。

朱漆巴紋牡丹沈金御供飯
- 九州
- 第二尚氏時代・16~17世紀
- 沖縄県立博物館・美術館蔵
- 展示期間
- 2022年7月16日(土)~8月7日(日)
S字に曲がった6本の脚を持つ特徴ある器形は、琉球漆器独特のものです。
尚家の家紋である左巴紋(ひじゃいぐむん)と牡丹唐草文が沈金で施されています。
藤木 勇人(ふじきはやと)
うちな〜噺家はなしかと称し「⽇本の南の島に住む⼈々の生活」を伝えるため、高座噺はなしとおしゃべり(ゆんたく)で笑いを交えながら、沖縄出⾝者、沖縄好きの⼈はもちろん沖縄を知らない⼈たちにも⼗分に理解してもらえる物語を創作し演じている。役者としても活動し、NHKラジオ第一「沖縄熱中倶楽部」、連続テレビ小説「ちむどんどん」出演中(金城順次役)。
「ちむどんどん」
金城順次 役で出演