皇室に受け継がれてきた品々を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館(東京・皇居東御苑)は、2021年度から収蔵品の展覧会を各地で開催しています。優品の数々や開催地にゆかりのある作品を通して、皇室と地方との縁を感じてもらうねらいです。展覧会開催に合わせて連載「皇室の美」をスタートします。展覧会に出品する名品の魅力、皇室にもたらされた由来など、同館学芸員が解説します。
古来人々は、自身の
小さな島国でありながら長い歴史に育まれてきたわが国の文化は、日本人特有の繊細さ、優美さを潜在的な核として実に豊潤な美の世界を構築してきた。他国の文化とは異なるその魅力は、日本の風土と日本人の感性、優れた表現技術によって生み出されてきたものである。
江戸時代、伊藤若冲(1716~1800)という画家とその作品も、そうした日本の中で生まれた。
彼は日々の生活の中で、共に生命を精一杯輝かせる様々な生き物を描くために、彼が描こうとイメージする表現を追求し、それまでに習得した絵画技法によって工夫を重ね、自身の感性を存分に生かして彼ならではの作品を描いた。
若冲の
虫たちは何を見ているのか、何を語りあうのか。花々は何故に美しさを競い合うのか。その想いは千差万別であっていい。子供たちの眼差しで、大人の眼差しで、先人の感性が創り上げた美の世界に入り込み、心の眼で楽しみ、創造力豊かになる。夏の東京芸術大学大学美術館の展覧会はそんな場であってほしい。そう願いつつ、多くの人と出会うための準備を進めている。
(前宮内庁三の丸尚蔵館首席研究官 太田彩)
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伊藤若冲が「釈迦三尊像」とともに京都・相国寺に寄進した30幅に及ぶ花鳥図の大作。明治22年(1889年)、相国寺より明治天皇に献上され、現在は三の丸尚蔵館に収蔵される。展覧会には10幅が出品される(展示期間は8月30日~9月25日)。
◆特別展 日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱
【会期】8月6日(土)~9月25日(日)
【会場】東京芸術大学大学美術館(東京都台東区上野公園)
【主催】東京芸術大学、宮内庁、読売新聞社
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/
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