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2022.6.17

【修理リポート】国宝「扇面法華経」(大阪・四天王寺蔵)修理始まる…平安の美、未来へ

修理が行われる国宝「扇面法華経」巻第六(大阪市天王寺区で)=原田拓未撮影

四天王寺(大阪市天王寺区)が所蔵する国宝「扇面法華経」のうち、「巻第一」と「巻第六」が4月27日、同寺の宝物館から京都国立博物館内の文化財保存修理所に移された。

「扇面法華経」は平安時代後期(12世紀)の作。装飾された扇形の冊子に、やまと絵で貴族や庶民の多彩な風俗が描かれ、法華経などが写経されている。修理はこの2冊を含め、四天王寺に伝わる全5冊について5年かけて進める。

南谷恵敬みなみたにえけい執事長(69)が巻第一と第六が収められた箱を開け、修理を担当する「岡墨光堂」(京都市中京区)の岡岩太郎社長(50)と確認。紙などで丁寧に養生した後、搬出された。

状態を確認する南谷執事長(左)と岡社長

二つの冊子は、料紙の表と裏の全面に塗られた細かい粉状の鉱物「雲母」や絵の具、墨の剥落はくらくが生じている。じている部分も劣化しており、いずれも解体して修理する。

岡墨光堂は美術品の修復を代々手がけており、岡社長は、祖父や父が扇面法華経について「非常に美しいが、ものすごく弱っている」と心配していたのを覚えている。「雲母の剥落を止めるのは難しいが、ここ20年ほどで技術も進歩した。修理は大変名誉なことであり、緊張感を持って取り組みたい」と語った。

(2022年6月5日付 読売新聞朝刊より)

国宝「扇面法華経」とは…

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