
加賀前田家の文化財を守り伝える公益財団法人「前田育徳会」は今年、創立100周年を迎えた。藩政期の前田家は、京都から名工を招いた「御細工所」の設置など、文化政策に力を入れたことで知られる。特別展でも展示されるきらびやかな武具や工芸品、金沢城跡や江戸屋敷跡に残された堂々たる石垣や建物から、百万石の威風を感じ取ることができる。(多可政史)
今回の展示の目玉である「百工比照」は、5代綱紀の時代に収集・整理された工芸各分野の資料の集大成だ。綱紀の没後も追加され、江戸時代前期から中期にかけての工芸の実物資料や見本、模造品、模写の図案や絵図、文書資料が良好な状態で残る。紙や革、染織品、木、竹、漆、金属など多岐にわたる材質や用途別に、10個の箱に収納されている。1975年に重要文化財に指定された。
綱紀は書籍の収集にも力を入れ、水戸藩主徳川光圀になぜ本を集めるのかと尋ねられた際、「何をなすにも書物がなければうまくいかない」と答えた逸話が残る。東京国立博物館調査研究課工芸室の福島修さんは「百工比照についても、工芸資料の集成が後の時代に役に立つと考えていたのでしょう」と語る。
石川県は「工芸王国」と呼ばれるが、加賀藩時代から先駆的な取り組みが行われていた点でも注目される。金沢美術工芸大は2009年度から「百公費照」の取り組みを参考に、北海道から沖縄までの工芸の技法や工程がわかる見本や道具類を収集している。
陶磁や漆工、金工、染織など様々な分野から集めた約6600点のコレクションは「平成の百工比照」として、同大の美術工芸研究所で手に取って閲覧できる。同研究所の門田枝美子さんは「授業で技法を学んだ学生が実際に製品見本や道具などを手に取ることで、創作のイメージを膨らませることができ、研究・制作面でも効果がある」と話す。

特別展「百万石!加賀前田家」
【会期】〔2026年〕4月14日(火)~6月7日(日)。
月曜休館(4月27日、5月4日を除く)。
午前9時30分~午後5時(金、土曜と5月3~5日は午後8時まで)
【会場】東京国立博物館 平成館(東京・上野公園)
【観覧料】一般2300円、大学生1300円、高校生900円。
【主催】東京国立博物館、公益財団法人前田育徳会、
NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kagamaedake2026/
(2026年4月5日付 読売新聞朝刊より)
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