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2021.12.17

【修理リポート】加賀前田家伝来の重要文化財「刺繍菊鍾馗図陣羽織」が前田育徳会(東京都目黒区)に戻る

魔よけの神 再び降臨
修理を終えた重要文化財「刺繍菊鍾馗図陣羽織」。戦国武将の前田利家が出陣の際に羽織ったと伝わる(東京都目黒区で)=米田育広撮影

加賀前田家伝来の重要文化財「刺繍ししゅうきく鍾馗図しょうきず陣羽織」の修理が約2年かけて完了し、京都市内の修理先から、所有者の公益財団法人前田育徳会(東京都目黒区)のもとへ戻った。

刺繍菊鍾馗図陣羽織は、戦国武将の前田利家が出陣の際に羽織ったと伝わる桃山時代の陣羽織。淡い茶色の絹地に刺繍や金箔を用いて、前面に菊の花、背面に魔よけの神とされる鍾馗がデザインされている。

菊の花の刺繍部分の周りを補強した(刺繍菊鍾馗図陣羽織の前面)
迫力のある鍾馗の表情が鮮やかになった(背面)

絹地が所々欠けるなどの劣化が見られたため、2019年に修理に着手。いったん陣羽織の前面、背面ともそれぞれ表地と裏地に解体した上で、主に刺繍以外の部分を補強した。表地と裏地それぞれの裏側から薄い和紙を貼り、さらに絹をあてて仕立て直す作業などを行った。国宝・重要文化財など豊富な修理実績を持つ染技連(京都市中京区)と岡墨光堂(同)が担当した。

前田育徳会は1926年、加賀前田家16代当主の前田利為としなりが設立した。その3年前に発生した関東大震災を受け、前田家伝来の文化財を保存し、後世に伝えていく必要性を感じたためという。

修理を終えた刺繍菊鍾馗図陣羽織は7月16日、前田育徳会で関係者に披露された。迫力ある鍾馗の姿がよみがえり、同会の石田寛人理事長(79)は「立派になって大変ありがたい。前田家が大事にしてきたものを伝えていければうれしい」と喜んだ。文化庁の伊東哲夫・文化財調査官(52)は「当時の個性的な武将の好みや、染織の技術が分かり、大変貴重な文化財だ」と話していた。

(2021年9月11日付 読売新聞朝刊より)

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