
文化財の保存や伝統文化の継承に取り組む個人・団体を顕彰する「読売あをによし賞」は2007年に始まり、今年で20回目を迎える。受賞者の技術とこころは次の世代にどう引き継がれているのか。現場を訪ね、6回にわたってリポートする。
コン、コン、コン――。大津市の黒田工房に、乾いた音が響き渡る。臼井浩明さん(54)が木材に凹凸を施して組み合わせた「
第11回(2017年)の本賞を受賞した表装建具製作の黒田俊介さん(82)の後継者として、
障壁画の骨組みである表装建具は、表に絵が貼られて完成すれば、人の目には触れない。しかし、ミリ単位のゆがみで絵にしわが生じ、保存状態に大きな違いが出る。かつては枠に
臼井さんは、ものづくりがしたいと、不動産会社を退職し、京都市内の工房で茶道具指物や家具職人として技術を磨いた。08年に黒田さんと出会い、弟子入り。のみ込みの速さは師匠も驚くほどで、15年に黒田工房の代表に就き、23年には選定保存技術保持者の資格を返上した黒田さんに代わって保持者に認定された。

「文化財に携わる者は、長持ちする、誠意ある仕事をしなければならない」が信条の黒田さんから、人との向き合い方も学んだ。失敗が許されない文化財修理の仕事では、寺社などの文化財所有者、文化庁の職員、美術の修復家らとの協力が欠かせない。「家具を作っていたころは、こんなふうに細かく説明し、理解してもらいながら一つ一つの作業を進める経験はしたことがなかった」。大変だが、一つの目的に向かって手を携える喜びも大きい。
現在、文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の助成で、妙心寺(京都市右京区)

表装建具を製作する会社は国内に数社しかなく、後継者問題は業界の大きな課題だ。しかし、黒田工房では30歳代の若い職人も力をつけつつある。臼井さんは「親方がレールを敷いてくれた。技を絶やさないために、さらに次の世代も育てていきたい」と先を見つめる。(辰巳隆博)

◆第20回の候補者募集中
読売新聞社は「第20回読売あをによし賞」の候補者の応募を受け付けている。文化財の保存、修復の最前線の現場を支える活動「保存・修復」の部と、工芸や芸能などの伝統文化を継承し、発展させる取り組み「継承・発展」の部で選考する。賞金は各200万円。締め切りは6月19日(必着)。
所定の応募用紙に取り組み概要などの必要事項と、推薦を受ける第三者の情報を記入し、Eメールまたは郵便で送る。再応募も可能。海外での活動も含む。宛先は〒530・0055 大阪市北区野崎町5の9、大阪読売サービスイベント事業部「読売あをによし賞」事務局。メールはawoniyoshi@yomiuri.comへ。
問い合わせは事務局(06・6366・1857=平日午前10時~午後5時)。結果発表は秋頃を予定している。
(2026年4月5日付 読売新聞朝刊より)
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