手前からカナダ滝、アメリカ滝、ブライダルベール滝と続くナイアガラの滝の
近年の修理によって制作時の鮮明な色彩が
幅2メートルほどの大画面に展開するこの雄大なナイアガラの光景は、五姓田義松が渡米中に目の当たりにした体験をともなっているため、写真とは違う迫力がある。
この時、30歳代半ばだった彼は、日記によれば1888年(明治21年)の7月から9月にかけて少なくとも3回は現地を訪れて「実写」、すなわちスケッチをしていたのだが、その時、暴漢に襲われて金を奪われたという災難のエピソードも記されている。
翌年4月に帰国した彼は、さっそく短期間でこの大作を仕上げ、宮内省に納めた。当時の雰囲気を伝える木製の額縁も興味深い。
(東京藝術大学大学美術館教授・古田亮)
特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」は、東京藝術大学大学美術館(東京・上野公園)で9月25日まで開催中。詳しくはホームページ(https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/)で。
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