2022.4.18

【皇室の美】「動植綵絵」―生命を愛しむ若冲の想い

皇室に受け継がれてきた品々を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館(東京・皇居東御苑)は、2021年度から収蔵品の展覧会を各地で開催しています。優品の数々や開催地にゆかりのある作品を通して、皇室と地方との縁を感じてもらうねらいです。展覧会開催に合わせて連載「皇室の美」をスタートします。展覧会に出品する名品の魅力、皇室にもたらされた由来など、同館学芸員が解説します。

国宝「動植綵絵 芍薬群蝶図(しゃくやくぐんちょうず)」
伊藤若冲筆 江戸時代・宝暦7年(1757年)頃 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

古来人々は、自身のでとらえた自然の生み出す様々な造形や、営みの中の人々の姿を、自らの創造力によって“美のかたち”に表し続けてきた。その表現方法は実に多彩である。

小さな島国でありながら長い歴史に育まれてきたわが国の文化は、日本人特有の繊細さ、優美さを潜在的な核として実に豊潤な美の世界を構築してきた。他国の文化とは異なるその魅力は、日本の風土と日本人の感性、優れた表現技術によって生み出されてきたものである。

江戸時代、伊藤若冲(1716~1800)という画家とその作品も、そうした日本の中で生まれた。

彼は日々の生活の中で、共に生命を精一杯輝かせる様々な生き物を描くために、彼が描こうとイメージする表現を追求し、それまでに習得した絵画技法によって工夫を重ね、自身の感性を存分に生かして彼ならではの作品を描いた。

若冲の眼差まなざしがとらえた生き物は、画面の隅に描かれる葉っぱの一枚一枚、小さな虫まで、一筆一筆が生命をいつくしむように丁寧に描かれる。若冲のそのおもいが繊細で緻密ちみつな美しい描写から伝わるがゆえに、作品に対峙たいじする私たちもまたその想いの中にきこまれ、その中でそれぞれに想いを巡らし、対話する。

虫たちは何を見ているのか、何を語りあうのか。花々は何故に美しさを競い合うのか。その想いは千差万別であっていい。子供たちの眼差しで、大人の眼差しで、先人の感性が創り上げた美の世界に入り込み、心の眼で楽しみ、創造力豊かになる。夏の東京芸術大学大学美術館の展覧会はそんな場であってほしい。そう願いつつ、多くの人と出会うための準備を進めている。

(前宮内庁三の丸尚蔵館首席研究官 太田彩)

動植綵絵どうしょくさいえ
伊藤若冲が「釈迦三尊像」とともに京都・相国寺に寄進した30幅に及ぶ花鳥図の大作。明治22年(1889年)、相国寺より明治天皇に献上され、現在は三の丸尚蔵館に収蔵される。展覧会には10幅が出品される(展示期間は8月30日~9月25日)。

◆特別展 日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱
【会期】8月6日(土)~9月25日(日)
【会場】東京芸術大学大学美術館(東京都台東区上野公園)
【主催】東京芸術大学、宮内庁、読売新聞社
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト
【問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/

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