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2022.9.19

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」より<1>琳派の系譜にみる変化と持続…「西行物語絵巻」尾形光琳筆

「西行物語絵巻」巻三(部分) 尾形光琳筆 江戸時代(18世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

「願わくは 花の下にて春死なん その如月きさらぎの 望月もちづきの頃」などの歌で知られている西行法師。俗名は佐藤義清のりきよといい鳥羽院を警護する北面の武士だったが、23歳の若さで剃髪ていはつし、その後、源平争乱の時代に諸国を行脚しながら仏道と和歌に生涯をささげた。

旅と自然を愛した西行の人生は多くの人々の共感を呼び、鎌倉時代にはその行状を描く絵巻が登場し、以降はいくつかの系統の「西行物語絵巻」が制作され続けた。

尾形光琳によるこの作品は采女うねめ本と呼ばれる系統のひとつだが、半世紀以上前に俵屋宗達が描いたものの模写である。そして宗達作にはさらに室町時代に描かれた原本があった。宗達から光琳へのいわゆる琳派の系譜は、こうした写すという行為によって成り立っている。

重要な点は、光琳が模写から宗達らしい表現を学び、さらに自らの個性である明快な造形感覚を加えていくといった「変化を伴う持続」によって、琳派的と呼ばれるものが受け継がれていったことである。

(東京藝術大学大学美術館教授・古田亮)

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」は、東京藝術大学大学美術館(東京・上野公園)で9月25日まで開催中。詳しくはホームページ(https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tamatebako2022/)で。

もっと知りたい 特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

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