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2020.9.7

【作家が語る】奥田小由女―工藝2020出展作品から

海から天空へ
奥田 小由女 2018年 W・D・H:60・40・85cm (個人蔵)【人形】

東日本大震災の津波によってたくさんの人が海に流され、帰らぬ人となりました。この多くの尊い命を安らかに天空に誘いたいと願いながら制作いたしました。平成最後の夏、天災が次々に発生し、被災され亡くなられた方々の魂も共に天空へと祈りをささげました。素材では、自然由来の胡粉にこだわり長年研究を続けてきました。胡粉に水干絵具を混ぜ、にかわでときおろし作品毎に手作りし、独自の色胡粉を作ります。また、人形の肌は、透明感を出すために胡粉を何層にも塗り重ね丁寧に仕上げています。

奥田小由女(1936- )Okuda Sayume
大阪府生まれ。広島県で育ち、人形作家を志望して高校卒業後に上京、紅実会人形研究所の林俊郎に師事して創作人形を学んだ。1959年から現代人形美術展や光風会展等に出品して作家活動を始めた。日展を主体に活動し、日本現代工芸美術展で受賞を重ね、日展では1972年及び1974年特選を受賞した。胡粉による白を基調にした、自然のモチーフを抽象的に表した立体表現で注目を浴びた。後に色胡粉により豊かに彩色された婦人像をモチーフに母性や慈愛を主題とした優美な制作へと転じ、1988年文部大臣賞を受賞した。1990年度日本芸術院賞受賞。1998年日本芸術院会員となり、2008年文化功労者表彰を受けた。《海から天空へ》は、東日本大震災で海に罹災した人々を思い、多くの尊い命を安寧の天空に誘いたいという願いによる。東京都練馬区在住。

工藝2020の出展作品一覧・関連記事はこちら

「工藝2020」開催概要や日時指定チケットの情報は公式サイトで

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kogei2020/

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