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2022.8.8

【修理リポート】長谷川等伯の作と伝わる重要文化財「山水図襖」…墨の剥落止めなど丁寧に

「山水図襖」を点検する脇坂住職(左)と福士主任研究員(京都市東山区で)

妙心寺(京都市右京区)の塔頭たっちゅう隣華院りんかいん所蔵で、長谷川等伯の作と伝わる襖絵ふすまえ山水図襖さんすいずふすま」(重要文化財)が6月1日、京都国立博物館の文化財保存修理所で修理方針の検討に入った。山水図20面のうち8面を4年がかりで修理する。

襖絵は、豊臣秀吉の家臣・脇坂安治が1599年に寺を建立した際、当代を代表する絵師の等伯が手がけたとされる。「春夏景」「夏景」「夏秋景」「冬景」と四季を巡る構成で、1962年に重要文化財に指定されたが、紙の亀裂や墨の剥落はくらくが生じ、2017年から同博物館で保管されている。

今回搬入されたのは、「春夏景」の4面(各縦約1・8メートル、横約1・6メートル)。金泥でかすみ、墨で山や岩、人物などが描かれている。

同博物館の福士雄也・主任研究員(40)は「等伯が60歳代で制作した大作。このタイミングで修理すれば、今後100年はいい状態が保てる」と強調。修理を担当する「修美」の橋本悠・主任技師(34)は「墨の剥落止めや新しい裏打紙への交換などを丁寧に進めたい」と語った。

隣華院の脇坂尚文住職(46)は「先代から修理を願っており、長年の思いが実現して感謝したい。完成が待ち遠しい」と話していた。

(2022年7月3日付 読売新聞朝刊より)

重要文化財「山水図襖」とは…

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