2022.3.18

【修理リポート】重要文化財「板絵神像」―濃度の異なる膠水溶液を丹念に使い分け

絵の具層を強化した(岡墨光堂提供)

文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の助成事業で修理を進めている京都・宝積寺ほうしゃくじ所蔵の重要文化財「板絵いたえ神像しんぞう」について、2月17日、京都国立博物館(京都市東山区)の文化財保存修理所で所蔵者らが作業の現状を確認した。

修理後の状態を確認する寺石亮尚・宝積寺住職(手前)ら(2月17日、京都市東山区で)

鎌倉時代から伝わる板絵神像は、疫病退散の力を持つとされた「牛頭ごず天王」など複数の神像が描かれている。絵が掛けられていた鎮守堂は19世紀半ばに焼失したが、幸い板絵は難を逃れ、現在は京都国立博物館に寄託されている。本格的な修理は今回が初めて。4面あり、2020年度から2面ずつ修理を進めてきた。

剥離が進まないよう安定
【修理前】絵の具層が木の表面から浮き上がっている部分が目立っていた
【修理後】絵の具層の浮き上がりを抑え表面が平らになり表情がわかりやすくなった

修理は、濃度の異なるにかわ水溶液で、木の表面から浮き上がってしまった絵の具層を接着、墨書の剥離はくりが進まないよう安定させた。担当する「岡墨光堂」の小笠原具子ともこ・修復部長は「絵の具と墨では厚みが異なるので、膠水溶液が吸い込まれる様子をよく観察し、それぞれ適切な濃度で作業した」と説明した。

宝積寺の寺石亮尚りょうしょう住職は「表面が滑らかになり、描かれていたお顔も分かるようになった。素晴らしい技術と多くの方の支えで修理でき、感謝しています」と話した。

修理では安全に保存・展示するための箱を新調し、活用の機会も検討するという。

裏面の墨書部分を丁寧になぞり、安定させた
光を当てて修理箇所を確認する

(2022年3月6日付 読売新聞朝刊より)

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