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2022.12.7

【修理リポート】国宝「絹本著色阿弥陀聖衆来迎図」 … 裏に金箔 色合いに深み

2021年度から5年計画で修理中の国宝「絹本けんぽん著色ちゃくしょく阿弥陀あみだ聖衆しょうじゅ来迎図らいごうず」(和歌山・有志八幡講蔵)について、作業状況などを報告する会議が修理を担当する大津市の坂田墨珠堂で開かれた。

国宝「絹本著色阿弥陀聖衆来迎図」の修理状況を確認する参加者ら(大津市で)

来迎図は、金色の阿弥陀仏や菩薩ぼさつが死者を極楽へ導く様子を表現。3幅合わせて縦約2メートル、横約4メートルあり、平安時代の仏画の最高傑作とされる。絵の一部は制作当初の絹が失われ、後世に絹や彩色を補った部分がある。

もろくなった絹や絵の具を傷めないよう裏打紙(肌裏紙)を剥がしたところ、阿弥陀仏の顔や体などの裏側から金箔きんぱくを施す「裏箔」が確認できた。表面に描かれる絵の色合いに深みを持たせ、金の光沢を和らげる効果があるという。

金箔を施した裏箔が確認された

会議では、来迎図を保管する高野山霊宝館(和歌山県高野町)や文化庁の担当者らが絵の裏を観察。裏箔の部分にライトを当て、後世に補われた絹の状態などを確認した。

高野山霊宝館の学芸員で僧侶の鳥羽正剛さんは「表から見えないのに、裏側に金箔を施していたとは」と驚き、「往時の人々が特別な思いを込めて来迎図を制作した様子が伝わる」と話した。

紡ぐプロジェクト】 
国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2022年12月6日付 読売新聞朝刊より)

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