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2025.11.14

【修理リポート】重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」(和歌山・成就寺蔵)-「絵の裏側を見る貴重な機会」

襖の縁を外した状態について説明を聞く大崎克己住職(右)(京都国立博物館で)

成就寺(和歌山県串本町)が所蔵する重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」45面のうち、ふすまに貼り付けられた「花鳥群狗図かちょうぐんくず」と「唐獅子図」(計8面)は、2024年度から京都国立博物館文化財保存修理所で修理が進められている。

襖のふちを外して解体し、クリーニングした後、古い裏打うらうち紙を取り除く作業を行った。〔2025年〕7月には、絵が描かれた本紙の裏面の状態を確認するため、大崎克己住職(80)や文化庁、県の担当者らが集まり、「松鶴堂」の修理技術者から説明を受けた。

修理にともない、「花鳥群狗図」では引き手金具が取り付けられていた箇所に緑色の絵の具が残っていたことや、縁に隠れていた側面の部分まで絵の具が回っていることなどが発見された。芦雪が南紀滞在中、どのように描いたかはっきりしていないが、「木枠に白い紙を貼った状態で描かれたのではないか」との見方も示された。

絵の裏面の状態の確認作業

修理は25年度で終了予定で、新しい裏打紙を貼り、襖に仕立て直す。大崎住職は「絵の裏側は50年、100年に1度の修理のときにしか見ることができず、貴重な機会。しっかり記録に残して、作品とともに次代に伝えたい」と話した。

(2025年11月2日付 読売新聞朝刊より)

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