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2023.11.13

【修理リポート】重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪筆」(和歌山・成就寺蔵) 本紙の安全最優先の補修

ライトに浮かび上がる修理中の「方丈障壁画」

紡ぐプロジェクトによる助成対象の文化財は現在18件。適切に修理し、保管していくために、調査、協議を進めている。佐賀・東妙寺の「東妙寺文書」、和歌山・成就寺の「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」の重要文化財2件の修理現場をリポートする。

成就寺(和歌山県串本町)が所蔵する重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪筆」45面のうち、「林和靖図りんなせいず」3面と「草花・鳥図」1面のふすま絵について、修理作業の状況を確認する協議会が〔2023年〕9月、京都国立博物館(京都市東山区)で行われた。

「方丈障壁画」は「奇想の画家」として知られる芦雪(1754~99年)が1786年頃、師・円山応挙の名代として同県南部に滞在した際に制作した。当時30歳代前半の芦雪が、すでに一人で山水、人物、花鳥などの幅広い画題を手がけていたことがわかる作品という。同県立博物館が保管している。

修理する4面は日焼けや虫食いによる傷みが進んでいるため今年5月、京都国立博物館の文化財保存修理所へ移し、本紙表面の汚れを吸い取り紙に移すクリーニングを実施した。

修理を担当する「松鶴堂」の袴田尚志技師長が、本紙の安全を最優先して修理を進め、制作時の墨が裏打紙に浸透している所は除去せず残す――など今後の修理方針を説明した。

成就寺の大崎克己住職(78)は「文化財を後世の多くの人に見てもらえるように、専門的な修理をお願いしたい。自然な仕上がりとなることを期待している」と語った。

修理は今年度中の完了を目指す。

(2023年11月4日付 読売新聞朝刊より)

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

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