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2023.1.16

【修理リポート】伊藤若冲「蓮池図」、長沢芦雪「方丈障壁画」各協議会で作業確認

「蓮池図 伊藤若冲筆」

  制作時、「宣紙」で裏打ちか

「蓮池図」の修理状況の説明を受ける西福寺の榎原住職(左)(京都市東山区で)

江戸時代中期の絵師・伊藤若冲じゃくちゅうが池に浮かぶハスを描いた水墨画、重要文化財「蓮池図れんちず」の修理協議会が、京都国立博物館(京都市東山区)で開かれ、関係者が2023年度に完了する作業内容を確認した。

70歳を過ぎた若冲が1790年に描いた傑作で、西福寺(大阪府豊中市)が所蔵。制作当初は6面の襖絵ふすまえだったが、昭和初期に6幅の掛け軸に改装された。多数の折れや裏打紙の剥がれなどが目立つようになり、2021年度から修理を進めている。

細部に若冲特有の筆遣いがうかがえる

修理の工程で、約230年前の制作時に、本紙とおなじ中国製の上質紙「宣紙」で裏打ちした可能性が高いとわかった。昭和初期に修理した時の裏打紙は除去し、新たな和紙で裏打ちし直した。折れは細長く切った和紙で補強した。

協議会は館内の文化財保存修理所内で修理を担当する「松鶴堂」で開き、修理で折れやしわを抑えた水墨画を並べ、今後、掛け軸に戻す工程について意見交換した。西福寺の榎原清了住職(73)は「修理後に本堂に掲げる時のイメージができた」と話していた。

 
「方丈障壁画  長沢芦雪筆 」

  襖に仕立ててから作画

「林和靖図」の修理状況を確認する成就寺の大崎住職(右から2人目)ら(京都市東山区で)

臨済宗の成就寺(和歌山県串本町)が所蔵する重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪筆」(45面)のうち、2021、22年度の修理助成対象となった「林和靖図りんなせいず」と「花鳥群狗ぐんく図」各4面の襖絵について、作業状況を確認する協議会が京都市で開かれた。

「奇想の画家」として知られる芦雪が1786~87年に師・円山応挙の名代として和歌山県南部に滞在した際に制作。「林和靖図」は、中国の詩人を題材にしている。

協議会は京都国立博物館の文化財保存修理所で昨年11月に開催。制作当時の裏打紙が残り、過去に本格的な修理が行われていないことや、本紙の素材が「宣紙」だったことが報告された。

修理を担当する「松鶴堂」の森田健介技師長は、襖の縁の本紙を折り曲げた部分に絵がないことに触れ、「白い紙を張って襖に仕立ててから作画したと考えられる」と指摘した。雨漏りのシミなどはクリーニングで軽減され、成就寺の大崎克己住職(77)は「修理を通じて様々なことが分かり、大変きれいになった」と喜んでいた。

襖絵は今年度で修理を終え、寄託先の和歌山県立博物館(和歌山市)に戻る。

紡ぐプロジェクト 修理助成文化財
(◎は国宝、他は重要文化財。※は修理継続中

 
2019年度
  • ◎阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎) 京都・知恩院蔵
  • ◎普賢菩薩像 東京国立博物館蔵
  • 観音菩薩/梵天/帝釈天立像(二間観音) 京都・教王護国寺(東寺)蔵
  • 執金剛神立像・深沙大将立像像内納入品 和歌山・金剛峯寺蔵
  • ◎直刀/黒漆平文大刀拵 茨城・鹿島神宮蔵
  • 刺繍菊鍾馗図陣羽織 東京・前田育徳会蔵
  • 正親町天皇宸翰消息 京都・大雲院蔵
  • 道邃和尚伝道文 滋賀・延暦寺蔵
2020年度
  • 文殊菩薩像 京都・上品蓮台寺蔵
  • 方丈障壁画 長沢芦雪筆(45面のうち林和靖図壁貼付1面) 和歌山・成就寺蔵
  • 板絵神像 京都・宝積寺蔵
  • ◎阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀) 京都・浄瑠璃寺蔵 ※
  • 服飾類(伝上杉謙信、上杉景勝所用) 山形・上杉神社蔵 ※
  • ◎泉涌寺勧縁疏 京都・泉涌寺蔵 ※
  • ◎後宇多天皇宸翰弘法大師伝 京都・大覚寺蔵
2021年度
  • ◎阿弥陀聖衆来迎図 和歌山・有志八幡講蔵 ※
  • 方丈障壁画 長沢芦雪筆(45面のうち林和靖図襖貼付7面/花鳥群狗図襖貼付8面/唐獅子図襖貼付4面/附指定 草花・鳥図襖貼付1面) 和歌山・成就寺蔵 ※
  • 蓮池図 伊藤若冲筆 大阪・西福寺蔵 ※
  • 如意輪観音坐像/阿弥陀如来坐像/金剛薩埵坐像 京都・随心院蔵 ※
  • 智証大師坐像 京都・若王寺蔵
  • 三千院円融蔵典籍文書類 京都・三千院蔵 ※
2022年度
  • 東妙寺文書 佐賀・東妙寺蔵 ※
  • 山水図襖 長谷川等伯筆 京都・隣華院蔵 ※
  • 長命寺文書 滋賀・長命寺蔵 ※
  • ◎絵因果経 京都・上品蓮台寺蔵 ※
  • 毘沙門天立像 京都・乙訓寺蔵 ※
  • ◎扇面法華経 大阪・四天王寺蔵 ※
 

(2023年1月8日付 読売新聞朝刊より)

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