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2024.5.10

【修理リポート】重要文化財「蓮池図れんちず」(大阪・西福寺蔵)伊藤若冲筆 ― 裂に隠れていた部分 明らかに

「紡ぐプロジェクト」修理助成 作業終了、在るべき所へ

修理が終わり、西福寺に戻った「蓮池図」

「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた文化財が、2023年度の作業を終え、次々に所蔵元に戻った。随心院の「金剛薩埵坐像こんごうさったざぞう」や宝積寺の「十一面観音立像」は漆箔しっぱく剥落はくらく止め、西福寺の「蓮池図」は折れの修理などに多くの力を注いだ。

江戸時代中期の絵師・伊藤若冲筆の水墨画、重要文化財「蓮池図れんちず」が3年にわたる修理を終え、〔2024年〕3月26日、京都国立博物館の文化財保存修理所から所蔵者の西福寺(大阪府豊中市)へ戻った。

池に浮かぶハスを描いた蓮池図は70歳を過ぎた若冲が1790年(寛政2年)に描いた。制作当初は6面の襖絵だったが、1930年の修理の際に6幅の掛け軸に仕立て直した。以来約90年が経過し、折れや裏打紙の剥がれが目立つようになっていた。

修理を手がけた「松鶴堂」の担当技師によると、修理前の掛け軸の状態では若冲の描いた絵の周囲に、隠れていた部分があったが、全て見えるようになった。作品を収納する際、画の表面に折れが出来にくくなるよう、これまでより太い軸棒を取り付けられるようにした。

修理を終えた蓮池図を確認した榎原深了副住職(44)は「折れが取れてハスの花が柔らかく見えるようになった。きれに隠れていた部分も明らかになり、作品に広がりを感じた」と話していた。

(2024年5月5日付 読売新聞朝刊より)

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