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2022.6.29

【修理リポート】重要文化財「長命寺文書」(滋賀・長命寺蔵)…寺の活動に活かされてきた証し、亀裂など修繕へ

搬出前に「長命寺参詣曼荼羅」の状態を確認する関係者ら(滋賀県近江八幡市で)=枡田直也撮影

重要文化財「長命寺文書ちょうめいじもんじょ」(滋賀県近江八幡市・長命寺蔵)が4月6日、保管する滋賀県立安土城考古博物館(近江八幡市)から文化財修理工房・坂田墨珠堂(大津市)へ移された。

長命寺文書(全4567通)は平安~明治時代の古文書群。このうち古文書「穀屋こくや文書」51通と、「長命寺参詣曼荼羅まんだら」3点を3年かけて修理する。

「長命寺文書のうち長命寺参詣曼荼羅(甲本)」の部分=枡田直也撮影

長命寺は西国巡礼第31番札所。修理される曼荼羅はいずれも江戸時代の作で、参詣者でにぎわう境内や門前町、琵琶湖が描かれている。かつては尼僧らがこれを折り畳んで携え、各地で開いて見せながら霊験を説き、寺への参詣や寄付を呼びかけていた。

搬出を前に、坂田墨珠堂の坂田さとこ社長(61)らが曼荼羅を慎重に広げ、状態を確認。折り目の周囲にしわや亀裂、絵の具の剥落はくらくが見られたほか、料紙に穴があいた部分もあった。今後、剥落を止め、補修紙で穴を繕うなどの処置を施す。

「長命寺文書のうち長命寺参詣曼荼羅(甲本)」の部分=枡田直也撮影

坂田社長は「傷みは曼荼羅が寺の活動に生かされてきた証し。歴史背景が伝わるように修繕したい」と語り、長命寺の武内隆韶りゅうしょう住職(68)は「寺に参詣してもらい、曼荼羅を再び見てもらえれば」と期待していた。

(2022年6月5日付 読売新聞朝刊より)

重要文化財「長命寺文書」とは…

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