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2022.8.24

【修理リポート】京都・三千院の文書類…大量の虫食いに「漉き嵌め技法」

2021年度から5年計画で修理が進む三千院(京都市左京区)所蔵の重要文化財「三千院円融蔵えんゆうぞう典籍てんせき文書類」について、今後の方針などを検討する協議会が京都国立博物館の文化財保存修理所で開かれた。

「三千院円融蔵典籍文書類」の修理状況を確認する三千院の小堀光實門主(右手前)ら(京都市東山区で)

三千院内の蔵「円融蔵」には歴代天皇の書状や法要の記録、日記類などが数多く保管されている。今回の修理は、8371点に及ぶ重文指定文書群のうち、緊急度の高い287点を対象としている。

協議会は6月8日、三千院や文化庁関係者らが出席して開催した。修理を担当する「松鶴堂」(京都市東山区)の川村洋史・主任技師は、虫食いなどの損傷が著しい江戸時代の日記に「め」の技法で修理を進めることを報告。冊子を解体し、紙漉きの要領で同質の紙の原料を流し込んで欠損箇所を埋める作業で、「開くことができないほど傷みが進行しており、この技法が有効」と説明した。

虫食いが多く見られた日記

元の装丁がよく分からない冊子の修繕方法や、文書群を修理した後の収納環境などについては、現地調査を踏まえて方針を決めることが了承された。

三千院の小堀光實こうじつ門主(68)は「文書群は京都の宝であり、国の宝。後世にしっかり伝えるための保存修理をお願いしたい」と期待していた。

(2022年8月12日付 読売新聞朝刊より)

重要文化財「三千院円融蔵典籍(えんゆうぞうてんせき)文書類」とは…

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