「幽愁の毘沙門天」剥落止め
乙訓寺(京都府長岡京市)所蔵の重要文化財「毘沙門天立像」が、京都国立博物館(京都市東山区)の文化財保存修理所に搬入された。
同寺は平安時代、空海と最澄が出会ったと伝わる古刹。毘沙門堂に安置されている像は高さ約1メートルの寄せ木造りで、あわれみ深い表情から「幽愁の毘沙門天」とも呼ばれる。
平安後期の作とみられ、制作当初の彩色のほか、細く切った金箔を貼った「截金」文様が良好な状態で残るが、前回の修理は1932~33年。背中などで彩色や漆箔の浮きが確認されており、プロジェクトの対象になった。
5月9日、公益財団法人「美術院」(同市下京区)の修理技術者が、傷みが激しい部分に養生紙を貼って準備。翌10日、本体や台座、光背を薄葉紙で梱包し、修理所に搬入した。
今後、剥落止めなどの処置を進める予定で、堺淳・主任技師(45)は「90年を経て傷んだり色あせたりした部分に、丁寧に対処していきたい」と話した。
(2022年7月3日付 読売新聞朝刊より)
重要文化財「毘沙門天立像」とは…