紡ぐプロジェクトが行う2021年度の修理助成事業の対象となっている国宝「絹本著色阿弥陀聖衆来迎図」(和歌山・有志八幡講蔵)が、高野山霊宝館(和歌山県高野町)で開かれている開館100周年記念大宝蔵展「高野山の名宝」に展示されている。修理に先立つ最後の公開で、展示は6月6日まで。準備作業に密着した。
来迎図は3幅からなり、本紙は合わせて縦約2.1メートル、横約4.2メートル。阿弥陀如来を中心に様々な仏様が楽器を奏でながら、往生者を迎えにくる様子を描いており、平安仏画の傑作と言われている。比叡山などを経て16世紀に高野山へ伝わったとされ、現在は高野山の14か寺からなる「有志八幡講」が所蔵し、高野山霊宝館で大切に保管されてきた。
展覧会を前に、2つの箱に分けて収められた来迎図が収蔵庫から取り出され、運搬業者によって紫雲殿へと運び込まれた。
鳥羽正剛学芸員が「ゆっくり、ゆっくり」と声をかけ、数人がかりで真ん中のお軸から順番に掛け、位置などを念入りに調整した。
来迎図が展示されるのは、霊宝館の中心となる建物「紫雲殿」。紫雲とは仏様が乗る雲のことで、紫雲殿はまさにこの来迎図を展示するための施設として設計され、ほかの建物と共に1921年に開場、今年で100周年を迎えた。
鳥羽学芸員は「霊宝館は金剛峯寺と高野山内の子院(寺)の宝物を預かってきたが、この絵は絵画の中でもとりわけ貴重なもの」と話す。高野山で大切に守り伝えられて来たが、絵の具の剥落などが進んでおり、絵に負荷がかからないよう、公開の機会は慎重に検討されてきた。「(修理後は)コンディションが良くなるため、お披露目する機会も増えるのでは」と期待する。
展覧会ではこのほか、空海直筆の出家宣言書である国宝「聾瞽指帰」、空海が唐から持ち帰ったとされる仏像の国宝「諸尊仏龕」、空海が中国・唐から投げて高野山まで届いたとの伝説がある法具「飛行三鈷杵」(重文)の「三大秘宝」をはじめ、運慶作の国宝「八大童子立像」など、高野山に伝わる計221点を4期にわけて紹介する。2021年11月28日まで。
(取材・撮影 読売新聞デジタルコンテンツ部 沢野未来、和歌山支局 坂戸奎太★)
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