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2025.10.9

道長直筆の国宝 修理後初公開へ ― 2026年4月、奈良博で特別展「吉野・大峯」

蔵王権現立像 平安時代(12世紀) 奈良 大峯山寺

奈良国立博物館(奈良市)は〔2025年10月〕3日、特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現にささげた祈りと美―」(読売新聞社など主催)を来年4月10日から6月7日に開催すると発表した。

奈良・吉野から和歌山・熊野にいたる大峯の山々は1000年以上前に山岳修行が始まり、人々の信仰を集めてきた。展覧会では金峯山寺、大峯山寺の仏像や関連する絵画など約160件を展示する。

国宝「金峯山経塚出土紺紙金字経きんぷせんきょうづかしゅつどこんしきんじきょう」は、藤原道長らの直筆で、文化庁や宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」で修理が進められ、修理後初公開される。大峯山寺の秘仏の本尊と蔵王権現立像5体も展示し、約7メートルある金峯山寺の本尊3体を高精細デジタル撮影したVR映像も大型スクリーンに投影する。

金峯山寺の五條良知管領は「日本中に山岳修行の場があり、その中心が吉野・大峯。ぜひ、会場で1000年の人々の思いを知ってほしい」と話した。

大峯山上 祈りの宝物 奈良博 来春特別展 — 道長直筆写経や秘仏

「山上の美を一堂に」。奈良市の奈良国立博物館が3日、概要を発表した来春の特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現にささげた祈りと美―」(奈良国立博物館、金峯山寺、読売新聞社など主催)は、吉野の深山でひっそりと守られてきた祈りの文化財を、間近に鑑賞できる貴重な機会となる。

奈良博の講堂で開かれた記者会見では、ほら貝を吹く修験道の山伏に先導されて、金峯山寺(吉野町)の五條良知管領と、井上洋一館長が舞台に上がった。今年は開館130年の節目で、大峯について焦点を当てた初めての大規模展といい、井上館長は「大峯に宿った神仏の神髄が明らかになる。研究員が継続調査してきた成果も凝縮されている」と力を込めた。

大峯は険しさにかかわらず、古代以降、貴族から庶民までが広く信仰し、貴重な文化財を蓄積してきた。山口隆介・美術工芸室長は、国宝14件、重要文化財35件を含む約160件を展示する予定と説明。平安貴族・藤原道長ら直筆の写経で、発見から間もない2024年に国宝指定された「金峯山経塚出土紺紙金字経きんぷせんきょうづかしゅつどこんしきんじきょう」など注目される宝物について、写真とともに見所を解説した。

ほら貝を吹く山伏の先導で会見場に入る五條管領と井上館長

吉野に南朝を開いた後醍醐天皇の肖像画やゆかりの仏像、豊臣秀吉が吉野で開いた花見の様子を伝える屏風びょうぶのほか、明治の神仏分離令以降に海外流出したとみられる蔵王権現立像なども並ぶ。

初めて山上ヶ岳を下りた蔵王権現立像について説明する山口美術工芸室長(いずれも奈良市で)

展示に向け、女人禁制の山上ヶ岳山頂に立つ大峯山寺から9月、本尊の秘仏・蔵王権現立像(平安時代)など7体を、専門の輸送業者の7人が背負って下りた。このうち本尊など5体は、山を下りるのは初めて。山口室長は「調査して、人知れず守られてきた文化財がまだまだあることがわかった。質量ともこれまでなかった展覧会となる」と述べた。

会期は前期が来年4月10日~5月10日、後期5月12日~6月7日。月曜休館(4月27日、5月4日は開館)。観覧料は一般2000円、高校大学生1500円(いずれも前売り200円引き)、中学生以下無料。(中井将一郎)

(2025年10月4日付 読売新聞朝刊より)

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