奈良国立博物館(奈良市)は〔2025年10月〕3日、特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現に
奈良・吉野から和歌山・熊野にいたる大峯の山々は1000年以上前に山岳修行が始まり、人々の信仰を集めてきた。展覧会では金峯山寺、大峯山寺の仏像や関連する絵画など約160件を展示する。
国宝「
金峯山寺の五條良知管領は「日本中に山岳修行の場があり、その中心が吉野・大峯。ぜひ、会場で1000年の人々の思いを知ってほしい」と話した。
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「山上の美を一堂に」。奈良市の奈良国立博物館が3日、概要を発表した来春の特別展「神仏の山 吉野・大峯―蔵王権現に
奈良博の講堂で開かれた記者会見では、ほら貝を吹く修験道の山伏に先導されて、金峯山寺(吉野町)の五條良知管領と、井上洋一館長が舞台に上がった。今年は開館130年の節目で、大峯について焦点を当てた初めての大規模展といい、井上館長は「大峯に宿った神仏の神髄が明らかになる。研究員が継続調査してきた成果も凝縮されている」と力を込めた。
大峯は険しさにかかわらず、古代以降、貴族から庶民までが広く信仰し、貴重な文化財を蓄積してきた。山口隆介・美術工芸室長は、国宝14件、重要文化財35件を含む約160件を展示する予定と説明。平安貴族・藤原道長ら直筆の写経で、発見から間もない2024年に国宝指定された「
吉野に南朝を開いた後醍醐天皇の肖像画やゆかりの仏像、豊臣秀吉が吉野で開いた花見の様子を伝える
展示に向け、女人禁制の山上ヶ岳山頂に立つ大峯山寺から9月、本尊の秘仏・蔵王権現立像(平安時代)など7体を、専門の輸送業者の7人が背負って下りた。このうち本尊など5体は、山を下りるのは初めて。山口室長は「調査して、人知れず守られてきた文化財がまだまだあることがわかった。質量ともこれまでなかった展覧会となる」と述べた。
会期は前期が来年4月10日~5月10日、後期5月12日~6月7日。月曜休館(4月27日、5月4日は開館)。観覧料は一般2000円、高校大学生1500円(いずれも前売り200円引き)、中学生以下無料。(中井将一郎)
(2025年10月4日付 読売新聞朝刊より)
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