2022.3.15

よみがえる琉球の「手わざ」vol.3―“失われた”道具作りから「朱漆巴紋沈金御供飯」

模造復元「朱漆巴紋沈金御供飯」(沖縄県立博物館・美術館蔵)
東京会場のみ5月3日~29日展示

「琉球王国文化遺産集積・再興事業」の成果から、琉球独自の大きな漆器を作り上げた取り組みを紹介する。現在の沖縄でも沈金は行われているが、当時の技を再現するには、道具から作る必要があった。

元の作品は現存せず…写真から復元

琉球王国時代には漆器を作る「貝摺かいずり奉行所ぶぎょうしょ)」があり、国を挙げて技が究められていた。今回模造復元された「朱漆しゅうるし巴紋ともえもん沈金ちんきん御供飯うくふぁん 」は、琉球文化研究家・鎌倉芳太郎が撮影した写真をもとに制作された。

大きなドーム形の蓋に、緩やかにS字を描く6本の脚。表面は鮮やかな朱色で、細い金色の線で植物などが描かれている。重要無形文化財(蒔絵まきえ)保持者(人間国宝)の室瀬和美さんは「形も朱色の漆も琉球独自のもの」と話す。

琉球王国・尚王家の紋章である 「左三つ巴紋」があしらわれている

元の作品は沖縄戦で失われ、同様の漆器は沖縄県立博物館・美術館などに3点しか残っていない。これらを参考に、木地構造などのデータに基づき同じ素材や工法で復元した。

「琉球漆器は技の宝箱。若手に伝える場を」

表面の沈金文様は、上塗りした漆の表面に「とう」で細い溝を掘り、そこに金箔きんぱくを押し込んで表現されている。作業にあたった宇良英明さんは「今の道具とは彫り口が違う。まずは道具を作るところからでした」と振り返る。

沈金の文様を彫る

「日本では石川・輪島や福島・会津などに沈金の技が伝わる。同じような線を彫り出している秋田の刀も参考に、7年がかりでようやく完成した。失われたものを取り戻すにはとても長い時間と熱意が必要」(室瀬さん)

金箔を押し込んで文様を描き出す

制作者の一人、前田貴子さんは「琉球漆器は技の宝箱。私たちもまだまだ古い手わざを学びたいし、若手に技を伝える場を設けていきたい」と話している。

蓋の部分は、薄い板を何重にも巻く「巻胎(けんたい)技法」で作られている。少ない木材で大きな漆器を作り出す知恵だ
つややかに上塗りが施された

◆沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
琉球王国の宝物などを集めた特別展「琉球」が東京、福岡で開かれる。美と技をよみがえらせた模造復元品を併せて紹介する。
【会期・会場】
5月3日(火・祝)~6月26日(日)東京国立博物館(東京都台東区)
7月16日(土)~9月4日(日)九州国立博物館(福岡県太宰府市)
【主催】東京国立博物館(東京展)、九州国立博物館・福岡県(九州展)、読売新聞社、文化庁ほか
【共催】沖縄県立博物館・美術館ほか
【特別協力】太宰府天満宮(九州展)
【協力】DNP大日本印刷
【輸送協力】日本航空
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/

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