2022.3.14

よみがえる琉球の「手わざ」vol.2―独自の縫い方、神女(ノロ)の衣裳「伊平屋阿母加那志の繍衣裳」

「琉球王国文化遺産集積・再興事業」の成果から、現代には伝わっていない刺しゅう技法をよみがえらせた取り組みを紹介する。2年近い時間をかけて「伊平屋いへや阿母加那志あむかなし繍衣裳ぬいいしょう」が完成した。

模造復元「伊平屋阿母加那志の繍衣裳」(沖縄県立博物館・美術館蔵)
九州会場のみ、展示期間未定
インドや中南米の刺しゅうも参考に技法を解明

沖縄県伊是名村には、15世紀にさかのぼる琉球王国の神女(ノロ)の衣装が伝来している。

一部は欠損して本来の彩色も失われていたが、2020年に模造復元を終え、絹地に緻密ちみつに施された、植物や鳳凰ほうおうの刺しゅう文様がよみがえった。

原資料の一つであるノロの衣装「黄色地鳳凰植物文様刺繍裂」の断片(部分)
第二尚氏時代・15~16世紀(沖縄県立博物館・美術館蔵)
九州会場のみ、展示期間未定

15~16世紀の古琉球の資料に見られる、この刺しゅう技法は、現代には伝わっていない。17世紀の薩摩の侵攻後にノロ制度が衰退し、各地に伝えられた衣装も同村所蔵の原資料のほかには数件しか確認されていない。

模造復元を任された活水女子大(長崎市)の寺田貴子特別専任教授(アパレル科学)は、日本やインド、中南米などの刺しゅうを参照しながら、独自の技法を突き止めた。

縫い目を交差させる和裁の「千鳥縫い」と同じような針の運びをしながら、原資料では3針以上重ねて刺しゅうしていた。絹糸はより合わせない平糸を使った。寺田さんは「平糸を用い、この手法で刺しゅうすることで、表面に複雑な光沢が現れる。衣装を身につけた時に、神女がより神々しく見えたのではないか」と話す。

復元した刺しゅう(拡大)
保存会も結成

原資料の植物図案は菊や梅に似たもので、いずれも王国時代の琉球には自生していなかった。欠損部を補うなど図案を監修した那覇市歴史博物館の山田葉子主任学芸員は「中国と日本、両方の影響が見られる。鳳凰や日常では見られない植物をあしらったことから特別な衣装だったとうかがえます」という。

復元した琉球古刺しゅう。植物の葉を描く

刺しゅう復元は寺田さんら7人がかりで完成まで2年近くをかけた。これを機に寺田さんらは技法を継承する保存会を結成。今回使用した37種類の文様のサンプル作りを進めている。

身頃と袖の模様を合わせる

◆沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」
琉球王国の宝物などを集めた特別展「琉球」が東京、福岡で開かれる。美と技をよみがえらせた模造復元品を併せて紹介する。
【会期・会場】
5月3日(火・祝)~6月26日(日)東京国立博物館(東京都台東区)
7月16日(土)~9月4日(日)九州国立博物館(福岡県太宰府市)
【主催】東京国立博物館(東京展)、九州国立博物館・福岡県(九州展)、読売新聞社、文化庁ほか
【共催】沖縄県立博物館・美術館ほか
【特別協力】太宰府天満宮(九州展)
【協力】DNP大日本印刷
【輸送協力】日本航空
【公式サイト】https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/

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