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2022.10.25

【皇室と日本美(下)】光源氏と恋人 一対の心(一関市博物館学芸係長・大衡彩織)

企画展「皇室と日本美―宮内庁三の丸尚蔵館収蔵品と岩手」

「住吉詣」
松岡映丘筆 1913年(大正2年)
宮内庁三の丸尚蔵館蔵
※展示は11月2~27日

平安時代中期の長編物語で日本古典の最高峰といわれる『源氏物語』。その第14じょう澪標みおつくし」の一場面を、長年にわたりやまと絵を研究してきた松岡映丘えいきゅうが、左右一対となる屏風びょうぶの形式で作品にしました。

右の屏風には、住吉大社へ参詣する光源氏の一行が描かれます。色鮮やかな衣装をまとう者たちがお供する、豪華な行列です。

片や、左の屏風はひっそりとした雰囲気です。舟の上で傘を差し掛けられているのは、源氏の恋人である明石の君。偶然この行列に出くわして、源氏との身分の違いを思い知らされ、やるせない気持ちになっています。風に乱れる髪が、その心情を伝えます。

おのおのの表情に目を凝らせば、交わす声まで聞こえてきそうです。

(一関市博物館学芸係長・大衡おおひら彩織)

企画展「皇室と日本美―宮内庁三の丸尚蔵館収蔵品と岩手」は一関市博物館 (一関市厳美町)で2022年11月27日まで開催中。問い合わせは同館(0191・29・3180)へ。

開催概要

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