「折れず」「曲がらず」「よく斬れる」。日本刀が持つ機能や美しさは、1000年にわたって磨き上げてきた製法の産物だ。
原料となる「玉鋼」は、熱した炉に砂鉄と木炭を入れる伝統の「たたら吹き」によって作られる。良質の玉鋼を用いて何回も折り返し鍛錬し、強靱な地鉄を作り出す。
刀の形に成形した後には、粘土性の土を刀身に塗る。この「土置き」の作業によって直刃や乱刃などの刀身の模様「刃文」が決まる。土が乾いたところで炉に入れ、焼き加減を見て水槽に入れて急冷する。化学反応で刃文を出す「焼き入れ」は刀工の腕の最大の見せ所だ。
刀を砥石にあてて研ぎ、磨き上げる「研磨」は、日本刀がもつ曲線美と、刃文の華麗さを強調する。古くは平安時代の鳥羽上皇の時代から、専門の研師の存在が確認され、明治時代に現在の刀剣研磨の技術が確立されたと言われている。
刀身を守る鞘を手がける鞘師、鞘に漆で化粧を施す塗師、美しい文様が刻まれた鐔を作る金工師の技術も日本刀作りには欠かせない。
一振りの刀には、匠たちによる伝統技術の粋が幾重にも重ねられている。
※写真はいずれも刀剣博物館提供
(2022年8月12日付 読売新聞より)