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2022.9.5

【守り伝える 現場から】日本刀 1000年の魅力vol.6 鞘師の技…職人の力を結集した刀装

日本刀など刀剣類の外装を指す「刀装とうそうこしらえ)」。高山一之さん(82)(東京都目黒区)は、この刀装の制作修理の分野で第一人者と評価され、文化財の保存に不可欠な選定保存技術「刀装(さや)製作修理」の保持者に認定されている。

鞘の内部を調整する高山さん

父も鞘師だったが、「需要も少なく、生きていくには大変な世界だと考え、若い時は後を継ごうという気はありませんでした」。研ぎや柄巻きなど刀作りに関する様々な技術を身につける中、周囲の勧めもあり、刀装一本に道を絞ったのは1970年のことだった。

「父の口癖は『見て覚えろ』。最初から教えてくれたらと思うこともありました」。だが、古代の刀など類例が少ない文化財刀の修理を行う際、父の教えの意味を悟った。「やったことがない作業でも、こうすれば出来るという感覚は重要。父は考える力を身につける大切さを教えてくれたのです」

高山さんが「刀装」を手がけた刀

外装を施さない「白鞘」の制作も請け負うが、「やっぱり面白いのは刀装。各分野の一流の技術者が集まり、作りあげる作業が醍醐だいご味です」。刀装は鞘師だけでなく、白銀しろがね師、彫金師、塗師ぬし柄巻つかまき師などが作る多様な部品で構成される。「自分もこれらの技術を経験したから、うまい人が誰かも分かる」。自らがコーディネーターとなり、職人同士を結ぶ人間関係が刀装の出来に直結するという。

神社・仏閣や博物館などが所有する名刀の刀装を手がける時も、所有者らとの調整が欠かせない。「例えば幕末の刀に、より古い時代の刀装だとミスマッチになる」。確かな時代考証の腕で、国宝・重要文化財などの重要な刀剣の刀装の修理・復元に関わる。「本物を後世に伝えることにこだわりたい。刀が注目される今、刀装の魅力も知ってもらえたらうれしいですね」

(2022年8月12日付 読売新聞朝刊より)

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