日本美術刀剣保存協会の刀剣の審査事業は「保存」「特別保存」「重要」「特別重要」の4段階にランクが設定されている。特別重要刀剣は、重要刀剣の中で、更に一段と出来が傑出し、保存状態が優れ、資料的価値が極めて高く、国指定の重要文化財に準ずる価値があると判断されている。
文化庁によると、国宝に指定されている刀身は111件、重要文化財は699件。このうち、第2次世界大戦後にGHQ(連合国軍総司令部)による武装解除の影響で、海外に流出するなどいまだに所在不明となっているものも多く、文化庁が情報提供を呼びかけている。
刀身の制作を担う「刀工(刀鍛冶)」「
中心となる刀工は5年間の修業を経て、文化庁主催の美術刀剣刀匠技術保存研修会を修了して、刀の制作が認められ、また日本美術刀剣保存協会での展覧会で受賞を重ね規定に達した刀工は、審査なしで展覧会などに出品できる「無鑑査刀匠」として認められる。
課題は後継者の確保だ。日本刀は文化財として評価される一方、武器としての規制を受けるため、制作は刀工ひとりあたり太刀や刀の場合、月2本に制限されている。
刀剣制作の発注は先細りで、技術者のなり手は多くはない。刀工の元での修業と資格試験のハードルが高く、新たな人材が育ちにくいのが現状だ。
原材料の確保も課題だ。日本古来の製鉄技術「たたら」は、1000年以上にわたって受け継がれてきた。たたらで産出した玉鋼は日本刀の原材料として欠かせず、主に山陰地方で生産されてきた。
だが、明治時代に西洋から大量生産出来る製鉄技術が伝わると、手工業のたたらは大正時代に最後の業者が廃業し、技術は途絶えた。
このため、日本美術刀剣保存協会は1977年、島根県奥出雲町に「日刀保たたら」を開設し、玉鋼製造(たたら吹き)として、文化庁の選定保存技術に認定されている。
日本美術刀剣保存協会(東京都墨田区)は、1948年に文部大臣の認可を得て発足した公益財団法人だ。第2次世界大戦後、連合国軍が軍国主義の象徴として日本刀などを没収、美術工芸品、制作技術の存続が危機に
68年には刀剣博物館を設立、個人などが所有する刀剣、刀装、刀装具を審査し特別重要、重要の新指定品は展覧会で公開している。
(2022年8月12日付 読売新聞より)
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