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2021.7.31

「永青文庫」の看板猫をみんなの手で未来へ 修理費用のためのクラウドファンディング(CF)スタート

細川家に伝わる文化財を所蔵する美術館「永青文庫」(東京都文京区)で、修理費用の確保を目指すクラウドファンディング(CF)がスタートした。コロナ禍による休館のため入場料収入が減るなか、今後の保存継承のための支援を呼びかけている。

重要文化財「室君」(松岡映丘筆、1916年)

永青文庫は国宝8件、重要文化財34件を含む9万点以上の文化財を所蔵する。このうち今回は、設立者である16代細川護立(1883~1970年)のコレクションで、収蔵品の「柱」とも言うべき近代日本画の名品のうち、重要文化財「黒き猫」(菱田ひしだ春草しゅんそう筆、1910年)、重要文化財「室君」(松岡まつおか映丘えいきゅう筆、1916年)、「観音猿鶴」(横山よこやま大観たいかん下村しもむら観山かんざん竹内たけうち栖鳳せいほう筆、1910年頃)の3点を修理する。

同館によると、「黒き猫」は最も人気が高い「看板猫」。1910年に描かれてから100年以上が経過し、良い状態で後世に伝えるための手当てを検討する時期に入っている。「放置することで絵の具の剥落はくらくなど損傷につながるおそれもある。注意深く手当てを検討したい」という。

重要文化財「黒き猫」(菱田春草筆、1910年)

「観音猿鶴」は2021年中の着手を目指し、重要文化財に指定されている「黒き猫」、「室君」は文化庁などと協議して修理計画をまとめる。

「観音猿鶴」(横山大観、下村観山、竹内栖鳳筆、1910年頃)

CFは1000万円を第一目標とし、10月8日(金)23時締め切り。3000円から100万円まで12コースあり、返礼品は1万円で限定デザインの招待券(4枚つづり)、1万5000円で「黒き猫」甲州印伝ポーチなど。

同館副館長でエディター・ライターの橋本麻里さんは「美術に関心を寄せる多くの方は、主に鑑賞という行為を通じて、文化財とコミットしてこられたものと思います。この鑑賞のための場――展示施設としての美術館・博物館を成り立たせていくためには、収集保管・調査研究にも多大なリソースが必要です。世界的なパンデミックは、永青文庫のような小規模館の運営に大きな影を落としています。これから先の未来にわたって、多くの人たちが、いつでも・誰にでもひらかれた場で文化財を享受できる環境を守るために、少しだけお力をお貸しいただけないでしょうか」とコメントしている。

寄付はサイト(https://readyfor.jp/projects/eiseibunko_01)で受け付ける。問い合わせは永青文庫(03-3941-0850)へ。

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