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2021.4.6

【祈りのかたち】江戸、華やぐ~日本博・皇居外苑特別公演から<1>

皇居外苑の特設舞台で演じられた「翁」(東京都千代田区で) ⓒ日本芸術文化振興会

江戸城でかつて上演された能、琉球舞踊などを再現した特別公演「祈りのかたち」が政府の文化プログラム「日本博」の一環として3月12、14日、皇居外苑で開催された。

国家安寧の祈りを込めたという能の舞や沖縄の祝いの踊りが、日本国内を覆う不安を払拭ふっしょくし、明日への希望を呼ぶかのようだった。

皇居外苑の特設舞台で、東日本大震災からの復興、コロナ収束へ祈りを込めて伝統芸能の担い手が研ぎ澄まされた芸を披露した「祈りのかたち」公演。「皇居やその周辺で能や狂言が上演されたのは約100年ぶり」(日本博事務局)という貴重な催しで、まさに令和の「町入能まちいりのう」と言えた。

舞台の後ろには明治時代に架けられた“石橋”に、江戸城の面影を色濃く残した石垣とおほり、優美にそびえる伏見やぐらを望むことができた。美しい借景が古式ゆかしい装束の芸能者たちと調和し、観客はまるで過去の日本に迷い込んだような不思議で快い感覚を味わった。

穏やかな天候の初日から一転、2日目は残念ながら雨天で中止に。3日目は快晴となったが春の季節に特有の強い風が吹いた。かさや扇を風にはためかせつつ、時に力強く、時に静かに舞う彼らの雄姿から、かつて能舞台が江戸城にあった時代がしのばれた。

■ 観世流 翁

「能にして能にあらず」と言われる特別な演目で、翁(観世清和さん)、三番叟(野村萬斎さん)、千歳(観世三郎太さん)が、それぞれ国土安穏、五穀豊穣ほうじょうなどの祈りを込めて舞った。

観世清和さん(翁) ⓒ日本芸術文化振興会
野村萬斎さん(三番叟) ⓒ日本芸術文化振興会
観世三郎太さん(千歳) ⓒ日本芸術文化振興会

(出演者)翁 観世清和▽三番叟 野村萬斎▽千歳 観世三郎太▽面箱 野村裕基▽笛 松田弘之▽小鼓 鵜澤洋太郎、飯冨孔明、清水和音▽大鼓 亀井広忠▽後見 片山九郎右衛門、坂口貴信▽三番叟後見 野村太一郎、高野和憲▽地謡 梅若実、武田宗和、岡久広、武田尚浩、上田貴弘、藤波重孝、角幸二郎、清水義也、木月宣行、川口晃平

【町入能】

江戸時代、幕府の式楽(儀式で上演される芸能)だった能を、慶事があると江戸城内に町人も招き、武士と共に楽しんだ。

■ 開催趣旨

日本博のテーマ「日本人と自然」に沿い、皇居の自然と二重橋を背景に舞台を特設。江戸時代に天下泰平を祈った能・狂言を中心に、東日本大震災の復興祈念で東北の民俗芸能、沖縄・首里城の再建を願い琉球芸能を上演する。

■ 菅首相メッセージ(高橋比奈子文部科学副大臣読み上げ)

政府は、日本の美を体現する「日本博」を2019年より全国各地で開催しています。公演は、日本博の本番年である今年の幕開け、いわばキックオフとして行います。

皇居、かつての江戸城では能と狂言が上演されていました。この度、ゆかりの深い能と狂言を皇居外苑で皆さんに楽しんでいただくことになりました。

日本博を通じて、日本の素晴らしい文化が国内外に発信され、人々の感動を呼び起こし、次世代に引き継がれていくことを期待しています。

日本博皇居外苑特別公演~祈りのかたち~

(3月12~14日、皇居外苑 皇居前広場)

【主催】日本芸術文化振興会・文化庁・環境省

【スタッフ】監修 観世清和、大和田文雄▽技術監督 横沢紅太郎▽美術・照明・音響・舞台・舞台監督・制作 日本芸術文化振興会/国立劇場・国立能楽堂・国立劇場おきなわ・日本博事務局

(2021年3月28日読売新聞より掲載)

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