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「玉柏」平福百穂筆 1928年 宮内庁三の丸尚蔵館収蔵

2023.8.1

【皇室の名宝と秋田・上】昭和の繁栄願う若竹(秋田県立近代美術館学芸主事・保泉充)

特別展「皇室の名宝と秋田―三の丸尚蔵館 収蔵品展」

皇室に代々受け継がれた美術工芸品を通して、秋田と皇室のつながりに触れる特別展「皇室の名宝と秋田―三の丸尚蔵館 収蔵品展」が、〔秋田〕県立近代美術館(横手市赤坂)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。

 

「玉柏」

平福百穂筆
1928年 宮内庁三の丸尚蔵館収蔵

平福百穂ひらふくひゃくすいは、角館町出身の日本画家です。百穂は、日本の伝統的な技法に目を向けるとともに、写生を重視した作品を制作し、新たな日本画の道を探り続けました。

本作は、当時、日本画壇を代表する画家として活躍していた51歳の百穂が、昭和天皇の即位に際して、香淳皇后から昭和天皇への贈り物として制作した屏風びょうぶです。“玉”は美しいもの、気高いものに添える美称びしょう、“柏”は葉守はもりの神が宿るとされる神聖なものを意味します。

右隻には、柏の枝に仲むつまじく止まるつがいのキジバトが、左隻には柏樹はくじゅへ向かって流れる清流と昭和天皇のお印である若竹が描かれ、新しい時代と皇室の繁栄へ込めた百穂の願いが感じられます。

(秋田県立近代美術館学芸主事・保泉充)

特別展「皇室の名宝と秋田-三の丸尚蔵館 収蔵品展」は、秋田県立近代美術館 (横手市赤坂) で2023年9月3日(日)まで開催中。問い合わせは同館(0182・33・8855)まで。

(2023年7月13日付 読売新聞朝刊より)

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