日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2024.5.17

【美が結ぶ 皇室と香川・中】端正な文字 人柄垣間見え ― 藤原行成「敦康親王あつやすしんのう初覲関係文書しょきんかんけいもんじょ」 (香川県立ミュージアム主任専門学芸員・窪美酉嘉子)

皇室ゆかりの美術工芸品を収蔵する皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)から、国宝をはじめとする優品の数々や、香川ゆかりの作品を紹介する展覧会「皇居三の丸尚蔵館名品選 美が結ぶ 皇室と香川」が高松市玉藻町の県立ミュージアムで開かれている。見どころの作品を3回にわたり紹介する。

 

「敦康親王初覲関係文書」藤原行成
平安時代 1005年(寛弘2年)
皇居三の丸尚蔵館収蔵

本展では、書に優れた「三跡さんせき」と称される小野道風おののみちかぜ(894~966年)、藤原佐理ふじわらのすけまさ(944~998年)、藤原行成ゆきなり(972~1027年)の3人の名筆が勢ぞろいする。

今期の大河ドラマにも登場する藤原行成だが、本作品は当時をしのぶ歴史史料としても意義深い。

一条天皇の第一皇子、6歳の敦康親王(999~1018年)が、天皇である父に初めて公式に対面する儀式のため、一条天皇に仕える藤原行成が親王の装束や奉仕する人々の分担などを記した文書で、赤色や蘇芳色すおういろ(少し暗い赤色)といった、親王が身に着ける衣装の色まで記され、平安時代中期の朝廷の雰囲気が鮮やかによみがえる。

凜と端正な文字には行成の人柄が垣間見え、一条天皇や藤原道長の厚い信頼を受けたというのも納得の筆跡ふであとである。(県立ミュージアム 主任専門学芸員 窪美酉嘉子)

◇     ◇     ◇

「美が結ぶ 皇室と香川」展は〔2024年5月〕26日まで。 月曜休館。 087・822・0002。

(2024年5月16日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事