2021.9.11

「春日権現験記絵」皇室で継承 やまと絵の至宝-特別展「京の国宝」から

春日権現験記絵 巻七(部分)絵・高階隆兼筆 詞書・鷹司基忠ほか筆 鎌倉時代(14世紀)

京都国立博物館の特別展「みやこの国宝 守り伝える日本のたから」は、皇室に伝わる至宝の数々を展示している。

中でも鎌倉時代の絵巻で「やまと絵の集大成」として名高い「春日かすが権現ごんげん験記絵げんきえ」は、皇室が伝えた文化財を象徴する作品で、今年7月、文化審議会が、国宝に指定するよう答申した三の丸尚蔵館所蔵品5点のうちのひとつだ。春日社の神々にまつわる物語を20巻にわたって精緻に描写し、絹に描かれた絵巻としては、現存するものでは最大規模という。

同館の太田彩首席研究官は「左大臣・西園寺さいおんじ公衡きんひらの発願で制作されたことが目録に書き残されています。宮中の絵師・高階たかしな隆兼たかかねが筆を執るなど、歴史的な大事業として作られ、天皇をはじめ限られた人だけが見ることが許されました」と説明する。

「感涙を禁じ得ない」

絵巻を見た後世の文人らは、その素晴らしさを書き残している。室町時代の公卿で歌人の三条西さんじょうにし実隆さねたかは、前夜から神事を営んで臨み、「随喜の感涙を禁じ得なかった」とつづった。江戸時代には、天皇が閲覧される際に同席がかなった関白の近衛このえ基熙もとひろが「詞といい絵といい比類ない。感涙で袖をぬらしてしまう。国宝というべきものだ」と書き残している。

皇室は1000年以上もの間、みずからが和歌や書などの「作り手」となって各時代の文化を育むとともに、貴重な文化財を保持、継承する役割を担ってきた。太田さんは「2004年から行った修理では、皇居で上皇后さまが育てられた蚕の糸で表紙のきれを作りました。これもまた皇室による文化財継承として意義深い。厳重に守り継がれ、色鮮やかで格調高い絵巻をぜひご覧いただきたい」と話している。

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