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2022.7.28

【皇室ゆかりの名品】「七宝菊花形置時計」モダンな菊花形、吉祥あしらう

七宝しっぽう菊花形きっかがた置時計おきどけい

「七宝菊花形置時計」 林谷五郎
昭和3年(1928年) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

本作は、愛知が誇る工芸品である尾張七宝の置時計で、上部は菊花形にかたどられたモダンなデザインの容器となっている。容器の内張りには純金が用いられ、スイスの高級時計メーカー、ロンジン社製の時計がはめ込まれるなど豪華なつくりだ。

1928年、昭和天皇ご即位の大礼に際して愛知県から献上されたものであり、蓋のつまみを精緻な菊花形に作り込み、きり鳳凰ほうおうたちばなといった吉祥のデザインをあしらうなど皇室への献上を強く意識している。

大礼の折には日本全国から数多くの献上の品々が届けられたが、この置時計は昭和天皇が愛用され、戦後にいたるまで使われ続けたという。

(瀬戸市美術館学芸員・西野航)

皇室に伝わる優れた工芸品のうち、陶都・瀬戸をはじめとする愛知県ゆかりの品々を紹介する展覧会「皇室の名品―愛知ゆかりの珠玉の工芸―」が、瀬戸市美術館(愛知県瀬戸市)で7月31日まで開かれている。

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