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国宝 辟邪絵(へきじゃえ) 毘沙門天像 平安~鎌倉時代 12世紀 奈良国立博物館蔵

2019.8.14

【国宝 辟邪絵 毘沙門天像】邪悪な鬼を退治

邪悪な鬼類をけ除く種々の善神を表わした絵巻の中の一段であるが、この場合は『法華経』の功徳という面も持っている。詞書ことばがきに、山林の中で大乗の義を思惟しいする法華の持者を、鬼神が悩まそうとするとき、毘沙門天が弓矢で退治するとされるのは、直接の典拠を見いだし難いものの、『法華経』の「陀羅尼品 だらにほん」に、薬王菩薩ぼさつ・勇施菩薩・持国天・十羅刹女じゅうらせつにょと並んで、『法華経』持者を護る者として毘沙門天が挙げられているのに基づくことは疑いない。

『大日本国法華経験記』に、毘沙門天像が持物の鋒剣で牛頭鬼ごずきを切り殺して『法華経』持者を助けた話があるのと同様の、具体例の一つであろう。詞書には天王が「むろ」の上にとぶというが、図では岩陰に黒木柱にむしろの壁で草きのささやかないおりがあり、それには収まりきらぬ形で、毛皮を敷いて横ずわりし、朱塗りの机に肩肘をついた安楽な姿勢で、経箱から取り出した一巻をひらき見る、のどやかな僧の姿が表されている。

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