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2022.10.14

沖縄の「組踊」創始者 玉城朝薫の5演目一挙に上演…国立劇場おきなわで10月14日から

国立劇場おきなわ(沖縄県浦添市)は10月14~16日、沖縄の伝統芸能「組踊くみおどり」の創始者・玉城たまぐすく朝薫ちょうくん(1684~1734年)作の5演目を一挙に上演する。組踊の国の重要無形文化財指定50周年を記念した初めての試みで、野外特設舞台での人間国宝の共演や、琉球王国時代のからくり花火の再現もあり、見どころが満載だ。

2019年10月に野外の特設舞台で上演された「執心鐘入」の一場面(国立劇場おきなわ提供)

組踊は八・八・八・六調の琉歌を基調としたせりふ(唱え)と、歌三線うたさんしんなどの音楽、踊りで構成される歌舞劇だ。王府の踊奉行を務めた朝薫が、中国皇帝が琉球国王を任命するために派遣した冊封使さっぽうしの歓待を目的に、沖縄各地に伝わる民話や伝説を素材に歌曲と踊りを組み合わせた演劇として創作した。

初演は1719年。組踊は約300年の歴史の中で、琉球処分による王国消滅や沖縄戦による甚大な被害で存続の危機を迎えた。新興の商業演劇などに押されて衰退したが、再興への転機が1972年の沖縄の本土復帰に合わせた重要無形文化財の指定だった。保存・普及活動と伝承者育成が本格化し、2004年にはその拠点として国立劇場おきなわが開場した。

金城真次芸術監督は「朝薫に敬意を表し、可能な限り初演を再現しようと試行錯誤を重ねている」と語る。

意気込みを語る金城真次芸術監督(9月16日、沖縄県浦添市の国立劇場おきなわで)=田中勝美撮影

初日トップの演目は「朝薫五番」の中でも最高傑作とされる「執心しゅうしん鐘入かねいり」で、歌三線の西江喜春きしゅんと能楽小鼓方の大倉源次郎の人間国宝2人が共演する。

小鼓は、現在の組踊では使用していないが、古文献に「鼓」と記録されていることから、今回、取り入れた。各場面で小鼓の音が効果的か否かを一つ一つ確認しながら稽古を進めているという。

本番に向けた稽古が行われている(9月16日)

2日目の第1部では、組踊の誕生以前から冊封のうたげで大勢の士族の子たちが踊っていた「入子踊いりこおどり」も復元して上演する。沖縄の古典舞踊では珍しく三線などの旋律楽器を使用せず、太鼓などのリズムに乗せて一斉に歌と踊りを繰り広げるため難易度が高い。演奏家と三重の円を作った二十数人の踊り手が舞台上を繰り返し回り続ける。

舞台は2019年10月の組踊上演300年記念公演と同様に、劇場隣の公園に特設。初演時に琉球王国を訪れた冊封副使・じょ葆光ほこうの「中山伝信録」「冊封全図」などを参考にする。

からくり花火も再現

各日とも午後6時半開演で、公演後は冊封使をもてなす仲秋の宴で披露された「からくり花火」を再現する。1866年に書かれた王府の記録「火花方日記」にある仕掛け花火5種類を2019年から毎年一つずつ復元しており、今回は4種類目となる「四輪車」(高さ3・5メートル)を製作。屋根の内側から、儒者が乗った四輪車が出現する仕組みだ。

雨天の場合は屋内の大劇場で上演され、からくり花火は録画上映となる。

朝薫五番のあらすじ

▽14日
執心鐘入 美少年の中城なかぐすく若松への恋に破れた宿の女が鬼に変身し、僧たちに祈り伏せられる。大和芸能にも精通していた朝薫による「道成寺物」の作品。

女物狂おんなものぐるい 人さらいに連れ去られた子どもを、僧がユーモラスなかけ合いを見せながら保護する。正気を失った母の悲しみが伝わる散山さんやま節も聴きどころ。

▽15日
孝行の巻 貧しい一家の母親と弟を救うため、大蛇のいけにえになることを選んだ娘の物語。大蛇が登場して火を吹く場面が最大の見せ場。

▽16日
銘苅子めかるしー 羽衣はごろもを盗まれた天女が地上で子どもを授かるが、羽衣を見つけて天界に帰る。親子の別れの場面が涙を誘う。

二童敵討にどうてきうち 2人の兄弟が亡父の恨みを晴らすべく、踊り子に変装して酒宴に紛れて敵討ちを果たす。兄弟の華やかな舞に見応えがある。

(2022年9月28日付 読売新聞朝刊より)

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