Sponsored by 三菱地所
設備メンテナンスのために休館していた三菱一号館美術館が昨年11月23日再開館に伴い、小展示室を新設した。企画展と同時期に同館のコレクションを中心に、学芸員が興味や関心に応じた展示を年3回行う予定で、早くも同館の目玉となっている。2月15日に開幕する企画展「異端の奇才——ビアズリー- Beardsley, a Singular Prodigy」に合わせ、第2弾の小企画展として「江戸から東京へ —浮世絵・近代版画にみる」を開催。三菱地所が資料として収集してきた幕末から昭和にかけての浮世絵や新版画などを紹介する。同展の企画を担当した上席学芸員の野口玲一さんに見どころを聞いた。
三菱一号館美術館上席学芸員の野口玲一さん
2010年4月に開館した三菱一号館美術館はこれまで40を超す企画展を開催し、すでに東京・丸の内のランドマークとして多くの人に親しまれている。英国建築家のジョサイア・コンドルが明治時代に設計した三菱一号館を可能な限り忠実に復元し、ヴィクトリア時代のクイーン・アン様式の赤煉瓦の建物が近代的な超高層ビルの建ち並ぶ街でひときわ目を引いてきた。
今回の再開館に当たっての目玉が、新設された広さ約70平方メートルの小展示室。企画展を見終えて、ミュージアムショップへ向かう途中にあり、作品を気軽に鑑賞することができる。個々の学芸員の専門に応じた独自の切り口が展示の魅力だ。すでに第1弾として「坂本繁二郎とフランス」と題した小企画展を好評のうちに終え、2月15日からは第2弾として「江戸から東京へ —浮世絵・近代版画にみる」展を開く。
「江戸から東京へ —浮世絵・近代版画にみる」展入口
吉田博《東京拾二題 旧本丸》1929(昭和4)年、木版・紙、三菱一号館美術館蔵
幕末から昭和に至る浮世絵や新版画を計54点を展示し、歌川広重から吉田博まで多彩な作品が並ぶ。いずれも三菱地所が資料として収集したもので、「三菱一号館が建てられた東京・丸の内周辺の景観の変遷をテーマにしています」と野口さんが教えてくれた。
江戸幕府から明治政府への移行に伴い、江戸城を中心とした丸の内の街並みは大きく変化していった。例えば、江戸時代には大名屋敷が立ち並んだ丸の内には官庁街や練兵場ができ、その多くの土地が政府から三菱に払い下げられ、近代化の過程で発展していく。隣接する霞が関や日比谷、銀座といったエリアも文明開化の影響を受けて街並みが激変していく。「そのような姿が反映された当時の版画を通して、歴史散歩を楽しむように、近代における都市の変貌を味わっていただきたい」と野口さんは話している。
歌川広重 《江戸名所 霞か関眺望》 嘉永6(1853)年 大判一枚 山田屋庄次郎
三菱一号館美術館蔵
実際、堅苦しく構える必要はなく、展示作品が必ずしも美術的な観点から収集したものではないこともあって、「のほほんとした作風の版画もあり、史料として眺めていただいても楽しんでいただけるはず」と野口さん。加えて同時開催される企画展で紹介される英国の画家のビアズリーも19世紀末に数多くの耽美的な版画を制作しており、それらと日本の近代版画との共鳴を楽しむこともできそうだ。小展示室が新設されたことで、三菱一号館美術館でアートに触れる時間がより多彩で豊かなものになるだろう。
作品を通じて時代の移り変わりを感じることができる
三菱地所が設立した三菱一号館美術館は「都市生活の中心としての美術館」をミッションとして掲げ、日本を代表するビジネス街にある文化施設として多くの人を引きつけてきた。昨年4月に館長に就任した池田祐子さんも「美術館の未だ隠れた潜在力を見いだすことで、より幅広い人たちが『新しい私に出会う』プラットフォームとして、一層その存在感を高めていくことにあると考えています」と就任のあいさつに記している。
そうした想いを裏付けるように再開館に合わせ、小展示室に加えて多目的室「Espace(エスパス)1894」も新設。こちらではレクチャーなどを通し、関連事業の展開を目指す。美術館活動の幅を拡げることで、美術ファン以外の多様な人の来館を促し、周辺地域の活性化につながることも期待しているという。
その一環として、三菱地所が特別協賛している若手アーティストの発掘、育成を目的とした現代美術展「アートアワードトーキョー 丸の内(AATM)」の三菱地所賞の受賞作を三菱一号館歴史資料室を使い展示してきた。AATMは2007年から始まり、審査員が美術大学・芸術大学・大学院の卒業修了制作展を訪問し、厳選した作品の展示と審査員による最終審査を行ってきた。三菱一号館美術館の野口さんも審査員を務めている。
こうした取り組みに加え、三菱地所は2002年から毎年、障がいのある子供たちによる絵画コンクール「キラキラっとアートコンクール」を主催。全国から作品を募集し、優秀作を公式ホームページで公開すると同時に、全国4会場(札幌市、横浜市、広島市、高松市)で順次展示を行っている。こちらの審査員も野口さんが務めており、2月19日からコンクールの優秀賞50点を 「Espace1894」で展示する。これも再開館後初の試みだ。三菱一号館美術館の再開館、若手アーティストの育成、そして障がいを抱えた子供たちへの支援……。いずれの取り組みも「人を、想う力。街を、想う力」という三菱地所のブランドスローガンがアートを通して実践されている。
開催概要
日程
2025.2.15〜2025.5.11
前期 2月15日(土) - 4月6日(日)
後期 4月8日(火) - 5月11日(日)
*前期・後期で作品が入れ替わります
三菱一号館美術館小展示室
一般 2,300円
大学生 1,300円
高校生 1,000円
小企画展の観覧料は、企画展「異端の奇才――ビアズリー」に含まれます」
*小企画展のみの入場はできません
休館日
月曜日
但し[トークフリーデー: 2月24日、3月31日、4月28日]、5月5日は開館
開館時間
10:00-18:00
祝日を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日、4月5日は20時まで
※入館は閉館の30分前まで
お問い合わせ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
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