石川・能登地方の原風景を象徴する黒瓦とも呼ばれる能登瓦や、豊かな歴史をいまに伝える古文書。これら数多くの文化財や文化施設は今年の地震、水害によって保存・継承の危機に直面している。そんな中、立ち上がったのが建築・歴史などの分野で専門的な知識を持つ有志たちだ。復興道半ばの被災地で、能登の文化を守るために奮闘する人々の取り組みを紹介する。
能登の歴史・自然を伝える博物館や文化施設も地震による被害に見舞われた。
北陸最大級の縄文集落跡である真脇遺跡を紹介する「真脇遺跡縄文館」(能登町)は地震で収蔵庫の土器が破損し、豪雨災害でも館に続く道路の一部が崩れるなどの被害が出た。
ただ、発掘成果をもとに復元した茅葺きの縄文小屋は、持ちこたえた。一時休止していた展示も再開し、高田秀樹館長(64)は「自然と共生した能登の歴史を見てほしい」と話す。
七尾北湾に面した「のとじま臨海公園水族館」(七尾市)では2頭のジンベエザメが飼育されていたが、地震の影響で死んでしまった。だが、9月に志賀町沖で定置網にかかった体長約4.4メートルのメスの展示が10月から始まり、大きな水槽で悠々と泳いでいる=写真=。館内では地震の被害の様子や復旧の過程を伝えるスペースが設けられ、他の水族館や動物園からの支援や全国からの応援メッセージに対する感謝もつづっている。
「石川県能登島ガラス美術館」(同)は屋外に展示していた複数の大型ガラス作品が破損するなどし、現在も休館中だ。それでも、揺れを吸収する免震台に載せるなどしていたことが功を奏し、イタリア人作家エジディオ・コスタンチーニ作「おどけたフクロウ」など、館内の多くの作品が被害を免れた。
同館は敷地内の別棟や学校などでアート体験イベントを続けている。阪神大震災から来年で30年となる神戸市の神戸ファッション美術館では、能登半島地震復興支援を兼ねた企画「ガラスの祈り―石川県能登島ガラス美術館名品」展(〔2024年11月〕23日~来年1月26日)も開催される。
(2024年11月3日付 読売新聞朝刊より)
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