※末尾に国宝「普賢菩薩像」トークイベントのお知らせあり
随心院(京都市山科区)の重要文化財「木造
仏師・定朝の流れをくむ作者による平安時代後期の制作とみられ、1917年(大正6年)に当時の国宝に指定された。前回修理から100年以上が経過し、
報告会では、修理を担当した「美術院」の門脇豊研究部長が、像の内部の様子などを見せながら剥落止めを中心とした修理について説明した。
随心院の
戦国武将・上杉謙信をまつる上杉神社(山形県米沢市)所蔵の重要文化財「服飾類」(室町時代~桃山時代)について、関係者が2月、京都国立博物館の文化財保存修理所で作業の
88点のうち修理が進む4点で、謙信と豊臣政権の五大老で初代米沢藩主の上杉景勝が着用したと伝わる。修理を担当する「松鶴堂」の依田尚美・染織担当課長が説明した。
鮮やかな黄色の「
「
最終年度となる2023年度は保管方法を協議しながら仕上げに入る計画で、17代当主の上杉邦憲さん(79)は「貴重な技術のおかげで先祖が袖を通した着物が後世に伝えられることに感謝したい」と話していた。
国宝「絵因果経」(京都・
絵因果経は、釈迦の伝記を伝える「過去現在因果経」に、経文の内容を表す絵を添えた経典で、奈良時代(8世紀)に中国の原本を書写して制作したと推定される。
修理を担当する「修美」が、巻物の状態から解体した23枚を調べた結果、冒頭部分は水ぬれとみられる染みなどが目立つが、最後の部分はきわめて状態が良い。前半部分を中心に欠けている部分は補修紙で埋めている――などの現状が報告された。
また、料紙は麻と考えられていたが、高知県立紙産業技術センターで調査したところ、コウゾが原料で不純物が少なく、繊維が短く細断されたきめ細かい紙とわかった。ほぐして
高井隆成住職(75)は「最先端の調査で新しい発見もたくさんあり、絵因果経について深く知ることができた」と話していた。
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3年間の修理を終えた国宝「
展示期間中には、修理にあたった「半田九清堂」の技師らによるトークイベントを行い、約100年ぶりとなった修理の現場のもようなどを聞く。
4月15日午後1時から。同館平成館大講堂。申し込みは、9日までに 紡ぐプロジェクト公式サイトへ。
普賢菩薩像の観覧料は一般1000円、大学生500円。開催中の特別展「東福寺」のチケットでも観覧できる。問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)。
また、修理の工程などを記録した「国宝 普賢菩薩像 令和の大修理 全記録」(東京美術)を同館などで販売する。
紡ぐプロジェクトとは
国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。
(2023年4月2日付 読売新聞朝刊より)
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