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2020.8.13

【古都の祈り コロナに向き合う】東大寺―大仏さまに終息願う

東大寺ではコロナの終息を願い、僧侶たちが祈りを続ける(奈良市で)

東大寺大仏殿のいらかに日が差してきた。高さ約15メートルの本尊・盧舎那るしゃな仏(大仏)の前に約20人の僧侶が集まる。全員マスク姿。間隔を空けて着座する。ゆったりとした読経が響き渡り、参拝者らが手を合わせた。朝の勤行ごんぎょうの始まりだ。

疫病が蔓延まんえん し、飢饉ききんや戦乱が続いた奈良時代、聖武天皇は「皆が助け合わねばならない」とみことのりを発し、大仏造立への協力を全ての人に呼びかけた。東大寺にはその思いを受け継いできた祈りの歴史がある。

コロナ禍に直面してから対応には腐心する。感染拡大を防ぐため、春先は大仏殿の拝観を制限、今月も恒例の「大仏さまお身拭い」(7日)を中止した。

「今できることを」と常に模索を続ける。朝の勤行だけでなく、4月からは毎日正午、早期終息や感染者の回復を祈願してきた。遠方からも参拝できるよう、今月13~15日は大仏の映像のライブ配信を試みる。

「自分自身がどうあるべきか、世界中の人に突きつけられた問題です」と、狭川さがわ普文ふもん別当(住職)(69)は考える。その答えはどこにあるのか、自問は続く。

8世紀前半に天然痘の大流行を経験し、無事への祈りを込めて多くの寺社が建立された古都・奈良。コロナ禍という新たな脅威に向き合う祈りの場を訪ねる。

2020年8月13日付読売新聞から掲載

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