日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2024.1.12

【修理の時、来たる4】藤原道長・師通自筆の経典 ― 重文「金峯山経塚きんぷせんきょうづか出土紺紙金字経こんしきんじきょう」(奈良・金峯山寺蔵)

2024年度「紡ぐプロジェクト」修理助成対象選定

2024年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、兵庫県から国宝「聖徳太子および天台高僧像こうそうぞう」(一乗寺蔵)、三重県から重要文化財「聖徳太子勝鬘経しょうまんぎょう講讃こうさん図(西来寺せいらいじ蔵)、福井県から同「八相はっそう涅槃ねはん図」(つるぎ神社蔵)が初めて申請されるなど地域的な広がりを見せ、過去最多の9件に決まった。いずれも劣化が進み、特に絵画や文書は折れや染みなどが顕著という。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業が始まる。

 

平安時代中期に摂政などを務め権勢をふるった藤原道長と曽孫の師通もろみちが、自筆の紺紙金字経を金峯山(現・山上ヶ岳)の山上に納めた。

昨年から修理が始まった。順調なら2026年度にも公開できそうという

「奈良県金峯山経塚出土品」(国宝)の一部として江戸時代に紺紙金字経9紙が出土したと伝わる。近年、新たに191紙が、金峯山寺内で発見され、合わせて重要文化財に指定された。五島美術館(東京都世田谷区)も一部を所蔵し重要文化財に指定されている。

道長は自ら記した日記「御堂関白記」(国宝)に、金峯山へ参詣して経典を山上に埋めて奉納した史実を書き残している。紺紙金字経は貴族の信仰を今に伝える史料として価値が高い。

ただ、経年劣化による損傷が著しく、公開は難しい状態だ。将来の保存・活用のためには、金字の剥落はくらく止めや欠落部分を補修し、剥離している本紙を継ぎ直して、安全に扱える状態に戻さなければならないという。

すでに2023年9月から保存修理をはじめており、25年度の完了を目指す。

(2024年1月7日付 読売新聞朝刊より)

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