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2024.6.4

【修理リポート】国宝「宋版太平御覧ぎょらん」(京都・東福寺蔵)― 欠損部の形に合わせ補修紙

「紡ぐプロジェクト」修理助成 事業6年目 修理始まる

修理する冊子の状態を確認する東福寺宝物殿管理室の永井慶洲室長(右)

「紡ぐプロジェクト」の文化財修理助成事業は、今年度〔2024年度〕で6年目を迎えた。新たに助成対象となった国宝「宋版太平御覧」(京都・東福寺蔵)などが所蔵者のもとから修理所に運ばれ、作業がスタートした。

国宝「宋版太平御覧」は、中国・北宋期に編さんされた百科事典。東福寺(京都市東山区)が所蔵するものは、開山した円爾えんにが1241年に中国から持ち帰った。同寺資料研究所所長でもある京都産業大の石川登志雄教授によると、現在の中国には北宋版もその後の南宋版も残っていないが、「東福寺のものは目録も含め103冊全巻が伝わり、大変貴重」という。

修理は2023年度から進められているが、24年度に「紡ぐプロジェクト」の助成対象となった。〔2024年〕4月8日には、今年度作業する14冊が同寺から京都国立博物館文化財保存修理所にある「修美」と「岡墨光堂」(いずれも京都市中京区)の工房に運ばれた。

冊子を解体して1枚ずつの状態にしたうえで、虫食いなどによる欠損部を補修する。補修紙は、デジタル撮影したデータをもとに欠損部の形に合わせた紙をく「DIIPS方式」で作製するという。

修美の宇都宮正紀社長は「まとまった冊子類の修理で、複数の工房の共同作業になる場合、この方式なら補修紙の質をそろえられるし、効率的に進められる。本紙を水にけずに作業できることも利点」と説明している。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2024年6月2日付 読売新聞朝刊より)

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