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2023.2.7

鮮やか「五百羅漢図」― 東福寺の重文 300年ぶりの大修理完了 

4工房が合同体制で14年
3月7日から特別展「東福寺」で展示

東福寺(京都市東山区)の重要文化財「五百羅漢図」が約300年ぶりの大修理を終えて1月19日、特別展「東福寺」の会場となる東京国立博物館へ運び出された。

五百羅漢図は「画聖」と称された室町時代の絵仏師・吉山明兆きっさんみんちょう(1352~1431年)が3年以上かけて完成させた全50幅(縦約170センチ、横約90センチ)。五百羅漢は釈迦の弟子500人のことで、仏教説話などを基に、1幅に10人ずつ描かれている。

重要文化財「五百羅漢図」第17号
吉山明兆筆
京都・東福寺蔵
(3月28日~4月16日展示)
重要文化財「五百羅漢図」第29号
吉山明兆筆
京都・東福寺蔵
(3月28日~4月16日展示)

大修理は1699年以来で、東福寺に現存する45幅と江戸初期に狩野派の絵師が復元した2幅の計47幅を、2008年から14年かけてよみがえらせた。

全ての作品で下地の絹や絵の具が損傷しており、作品の写真撮影を行い、個々の損傷状態を詳しく確認したうえで、にかわ液によって絵の具の剥落はくらくを止め、軸装を解体して古い裏打ち紙を除去。下地が欠けた部分に微細な絹を補ったり、裏打ちをし直したりと、精巧で地道な作業を積み重ねた。

通常、文化財の修理は単一の工房が手がけることが多いが、今回は作品の数が多く、4工房による合同修理体制とした。統一感のある仕上げとするため共通の材料を用い、技師の“個性”が出ないよう情報共有を図るなど、工房の垣根を越えて長期間の修理を進めた。

東福寺の資料研究所長で京都産業大学文化学部の石川登志雄教授は「画期的な修理体制で、水墨と極彩色の調和した鮮やかな姿がよみがえった。見応えのある羅漢図を多くの人に見てもらいたい」と話している。

修理前に五百羅漢図を確認する修理技師ら
剥落を止める
肌裏打ちの作業
表具を仕立て直す

修理後の初公開となる特別展は、根津美術館蔵の2幅、下絵を基に補作された1幅と合わせて全50幅を展示する。(会期中展示替えあり)

(修理工程の写真はいずれも岡墨光堂提供)

◆ 特別展 東福寺

会期】3月7日(火)~5月7日(日) 月曜休館(3月27日と5月1日は開館)
会場】東京国立博物館平成館(東京都台東区上野公園)
観覧料金】一般2100円、大学生1300円、高校生900円、中学生以下無料(前売りは各200円引き。3月6日まで販売)
主催】東京国立博物館、大本山東福寺、読売新聞社、NHK、NHKプロモーション、文化庁
問い合わせ】050・5541・8600(ハローダイヤル)

展覧会ホームページ https://tofukuji2023.jp/

※10月から京都国立博物館に巡回

(2023年2月5日付 読売新聞朝刊より)

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