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2025.7.11

【修理リポート】重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」(滋賀・石山寺蔵)― 仏像群 絵の具層剥がれ

紡ぐプロジェクト 2025年度修理助成

多宝塔内にある四天柱に描かれた仏像を確認する文化庁調査官ら

「紡ぐプロジェクト」の2025年度修理助成対象に選ばれた国宝2件、重要文化財3件の修理に向けた取り組みが始まった。それぞれの所蔵元から搬出される様子などをリポートする。

石山寺(大津市)の重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」について文化庁、修理を行う「国宝修理装潢師そうこうし連盟」(京都市中京区)、石山寺の各担当者が〔2025年〕4月22日、現地で今後の修理方針を確認した。

多宝塔は鎌倉時代初期の1194年(建久5年)の建立で、国宝に指定されている。1階内部には「四天柱」と呼ばれる4本の円柱があり、創建当初の作とみられる仏像群が描かれている。円柱の高さは約228センチ、直径は約30センチ。

円柱の天地を4段に区切り、東西南北の各面に1体ずつ仏像を描いた。当初は計54体が描かれたとみられるが、各柱とも絵の具層が剥がれ、現状では約20体の仏像が確認されるのみという。

修理は2年計画で、多宝塔内で進められる。この日は装潢師連盟の担当者が今年度の予定を説明。まず柱絵の状態を調査、記録するとともに、最適な剥落止めを行うためのにかわ水溶液を決定する。剥落止めの作業も始めるが、期間をあけ、絵の具のバランスなど変化を見極めながら進め、本格的な作業は来年度に実施するとした。また、進捗しんちょく状況について文化庁、石山寺と連絡を密に取りながら進めることを確認した。

鷲尾龍華座主(37)は「貴重な多宝塔柱絵をぜひ未来に伝えたい。専門家の皆さんのお力で、最適な修理をお願いしたい」と話した。

(2025年7月6日付 読売新聞朝刊より)

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