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2022.8.25

【修理リポート】平安文化の高さ伝わる国宝「扇面法華経」(大阪・四天王寺蔵)…冊子を解体して一枚ずつ作業

国宝「扇面法華経」巻第六(手前)と巻第一(奥)の状態を確認する関係者ら(京都市東山区で)=枡田直也撮影

四天王寺(大阪市天王寺区)が所蔵する国宝「扇面法華経」のうち、「巻第一」と「巻第六」の修理方針を話し合う専門委員会の初会合が6月24日、京都国立博物館(京都市東山区)の文化財保存修理所で開かれた。

「扇面法華経」は平安時代後期(12世紀)の作。装飾された扇形の冊子に、やまと絵で貴族や庶民の多彩な風俗が描かれ、法華経が写経されている。

委員会は四天王寺の主催で、研究者や文化庁の関係者ら約20人が出席。修理を担当する「岡墨光堂」(京都市中京区)の小笠原具子ともこ・技師長がスライドを示しながら、紙の両面に塗られた粉状の鉱物「雲母きら」や、絵の具の層の剥落はくらくが進む現状などを報告した。

今後の修理方針として、▽冊子を解体して1枚ずつに分離し、平らな状態で作業する▽雲母層、絵の具層、墨部分に剥落止めを行う▽再び冊子に仕立てる――といった作業内容を説明。専門家からは「冊子が1枚ずつ分離されるのは貴重な機会」との指摘があり、冊子のとじ方を研究し、記録することも確認した。

四天王寺の南谷みなみたに恵敬えけい執事長(69)は「冊子は難しい技術を用いて作られており、平安時代の文化力の高さを改めて感じた。大変な修理になるが、皆様方のお知恵を拝借し、後世に残るような修理をしたい」と話した。

(2022年8月12日付 読売新聞朝刊より)

国宝「扇面法華経」とは…

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