荒れた肌がしっとり…2.2メートルの「中尊」
平安後期の国宝「木造阿弥陀如来坐像」(九体阿弥陀)で最も大きな「中尊」が、奈良国立博物館の文化財保存修理所での修理を終え、1年ぶりに浄瑠璃寺(京都府木津川市)本堂に戻った。
木造阿弥陀如来坐像は本堂に9体並ぶ仏像で、その中心に座っていたのが高さ2.2メートルの中尊だ。薄葉紙やさらしで顔や体が保護され、木製の担架に固定された状態で、6月末に浄瑠璃寺に運ばれていた。
中尊は担架を合わせると重さ約200キロにもなる。7月1日に行われた作業では、修理を担った美術院国宝修理所(京都市下京区)の技術者らが台座前に設置した高さ1メートル以上の台まで持ち上げた。
像を台に据え、体や顔を保護していた覆いを取り除くと、穏やかな仏の姿が現れた。奥の台座に水平移動させた後、像の向きや位置を微調整し、作業は完了。佐伯功勝住職は「ひび割れていたところもあったが、荒れた肌がしっとりされたようだ」と喜んだ。
前回の修理から100年以上がたち、漆の下地に金箔を貼った「漆箔」が浮き上がった箇所の剥落止めを行ったほか、像の背後にある光背も修理した。
光背には約1000体の小さな「化仏」が取り付けられているが、そのうち800体以上を固定していた江戸時代の鉄くぎが腐食しており、すべて取り外して、竹くぎで打ち直した。
美術院国宝修理所の橋本麿嗣主任技師は「仏像の風合いは変えず、見えないところの細かい修理も時間をかけて行った。今の姿を後世に伝えていくことが我々の使命」と話した。
9体の修理は2022年度までの5年計画で進められており、これで5体が完了した。
(2021年9月11日付 読売新聞朝刊より)
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