2021.5.12

【20年度修理完了品から③】輝き戻った中尊~国宝「木造阿弥陀如来坐像」

紡ぐプロジェクトがスタートして4年目。貴重な文化財の修理が進む一方で、公開も進んでいる。

修理を終えたもの、これから修理を控えたもの。所蔵元や展覧会に足を運び文化財に直接触れることも、文化財を保存し後世に伝える後押しとなる。

国宝「木造阿弥陀あみだ如来坐像ざぞう」(京都・浄瑠璃寺蔵、平安時代「九体くたい阿弥陀」の中尊)

国宝「木造阿弥陀如来坐像」(九体阿弥陀)のうち最も大きな「中尊」=美術院提供

浄瑠璃寺(京都府木津川市)の本堂に安置されている9体の国宝「木造阿弥陀如来坐像」(九体阿弥陀)のうち、最も大きな「中尊」の修理が完了し、奈良国立博物館(奈良市)の文化財保存修理所で作業内容が報告された。

中尊は高さ約2.2メートルで、平安時代後期に作られたとされる。平安時代は9体の阿弥陀如来像を納めた建造物が多く作られたが、当時のまま残っているのは、浄瑠璃寺しかないといい、貴族たちの間で流行した浄土信仰の様子を伝える貴重な文化財だ。

国宝「木造阿弥陀如来坐像」(京都・浄瑠璃寺蔵)の中尊。緩んでいた左手を固定した=美術院提供

明治時代に行われた最後の修理から100年以上が経過し、多くの箇所で漆地に金箔きんぱくを貼った「漆箔しっぱく」が浮き上がっていた。2020年6月からの修理で浮き上がった箇所の剥落はくらく止めを実施。左手首はぐらつきが見られたため、新たな真ちゅう製のくぎで固定し、過去の修理で施された古色が変色した部分も違和感のない色に修整した。

丁寧に進められた古色修整作業=美術院提供

「全身にわたって見た目以上に浮き上がりが進んでおり、定着させるのに時間がかかった」と、修理を担った美術院国宝修理所(京都市)の橋本麿嗣まろつぐ主任技師は振り返る。

光背の化仏のうち緩みがあるものは、いったん外して鉄くぎを取り除き、竹くぎで打ち付けて固定した=美術院提供

像の背後にある光背や台座も修理した。江戸時代に作られた光背には、約1000体の小さな「化仏けぶつ」が取り付けられていたが、鉄くぎがさびて落下したものもあったため、竹くぎで固定し直した。台座の修理過程では、仏像の目の形を試し彫りしたような痕跡も見つかった。

中尊は夏頃に本堂に搬入し、2022年度に9体全ての修理を終える予定。浄瑠璃寺の佐伯功勝こうしょう住職は「ずっと守ってきたものを、こうして次の世代に伝えられることがありがたい。全ての修理が終わるのが待ち遠しい」と話した。

(2021年5月2日読売新聞より掲載)

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国宝「木造阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀)」(京都・浄瑠璃寺) 中尊を110年ぶりの修理へ搬出 | 紡ぐプロジェクト (yomiuri.co.jp)

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