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2023.5.9

【修理リポート】重要文化財「毘沙門天立像」(京都・乙訓寺蔵) 彩色、漆箔 慎重に剥落止め

乙訓寺(京都府長岡京市)所蔵の重要文化財「毘沙門びしゃもん天立像」が修理を終えて〔2023年〕3月、京都国立博物館の文化財保存修理所から同寺の収蔵庫に戻った。

修理を終えて搬入される毘沙門天立像(京都府長岡京市で)

同寺は平安時代、空海と最澄が出会ったと伝わる。毘沙門天立像は平安後期の作とみられ、高さ約1メートルの寄せ木造り。制作当時の彩色、細く切った金箔きんぱくを貼った「切金きりかね」文様が良好な状態で残る。ただ、前回の修理から90年が過ぎ、背中などの彩色や漆箔に浮き上がりが出ていたため、剥落はくらく止めなどの修理を進めていた。

修理を担当した「美術院」の堺淳・主任技師は「当初の彩色がよく残った貴重な像。慎重に剥落止めを行った。現時点で可能な限りの修理作業をした」と語った。

重要文化財「毘沙門天立像」

乙訓寺の川俣海雲住職(52)は「修理を終えて寺に戻り、心の安寧を得ることができた。(後から付けた)宝冠が外され、少年から青年になったように感じた。多くの人に見てもらえるよう公開を検討したい」と話していた。

(2023年5月6日付 読売新聞朝刊より)

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