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2024.6.4

【修理リポート】重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」(和歌山・成就寺蔵)―「花鳥群狗図かちょうぐんくず」襖縁から外し解体

「紡ぐプロジェクト」修理助成 事業6年目 修理始まる

「方丈障壁画」のうち、犬の親子を描いた「花鳥群狗図」

「紡ぐプロジェクト」の文化財修理助成事業は、今年度〔2024年度〕で6年目を迎えた。新たに助成対象となった国宝「宋版太平御覧ぎょらん」(京都・東福寺蔵)などが所蔵者のもとから修理所に運ばれ、作業がスタートした。

成就寺(和歌山県串本町)が所蔵する重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪ろせつ筆」は、45面あるふすまに貼り付けられた墨画などを2021年度から順次修理しており、今年度からは、「花鳥群狗図かちょうぐんくず」と「唐獅子図」(計8面)の作業が始まる。

成就寺の方丈障壁画は、33歳の芦雪が師・円山応挙に代わり紀南地方を訪れた際に現地で描いた。建具として日常的に用いられ、1979年の重文指定当時から、破れや水にぬれた跡などの傷みが見られた。

和歌山県立博物館に寄託されている「花鳥群狗図」と「唐獅子図」は 〔2024年〕 4月26日、県や同館、修理する「松鶴堂」(京都市東山区)の担当者らが修理前の状態を確認。花鳥群狗図は愛らしい犬の親子が描かれ、ほかの面に比べ、墨がはっきりしているという。右下の花の彩色も鮮やかに残るが、襖の縁から外して解体し、クリーニングなどを行う方針だ。25年度は古い裏打ち紙を外す作業などを予定している。

成就寺の大崎克己住職(78)は「修理を機に色々な調査が行われており、研究も進むとうれしい」と語った。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2024年6月2日付 読売新聞朝刊より)

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