文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の助成事業で修理を進めている京都・宝積寺所蔵の重要文化財「板絵神像」について、2月17日、京都国立博物館(京都市東山区)の文化財保存修理所で所蔵者らが作業の現状を確認した。
鎌倉時代から伝わる板絵神像は、疫病退散の力を持つとされた「牛頭天王」など複数の神像が描かれている。絵が掛けられていた鎮守堂は19世紀半ばに焼失したが、幸い板絵は難を逃れ、現在は京都国立博物館に寄託されている。本格的な修理は今回が初めて。4面あり、2020年度から2面ずつ修理を進めてきた。
剥離が進まないよう安定
修理は、濃度の異なる膠水溶液で、木の表面から浮き上がってしまった絵の具層を接着、墨書の剥離が進まないよう安定させた。担当する「岡墨光堂」の小笠原具子・修復部長は「絵の具と墨では厚みが異なるので、膠水溶液が吸い込まれる様子をよく観察し、それぞれ適切な濃度で作業した」と説明した。
宝積寺の寺石亮尚住職は「表面が滑らかになり、描かれていたお顔も分かるようになった。素晴らしい技術と多くの方の支えで修理でき、感謝しています」と話した。
修理では安全に保存・展示するための箱を新調し、活用の機会も検討するという。
(2022年3月6日付 読売新聞朝刊より)
あわせて読みたい~2020年度の作業リポート